「無料結婚式」で参列者から祝福を受ける新郎新婦。参列者はマスクを着用するなど感染対策を徹底している(昨年9月、京都市左京区岡崎・ヴィセオ)=LLB提供

「無料結婚式」で参列者から祝福を受ける新郎新婦。参列者はマスクを着用するなど感染対策を徹底している(昨年9月、京都市左京区岡崎・ヴィセオ)=LLB提供

「結婚式を諦めないでほしい」と語る鈴木社長。新たに挙式希望者を募集している

「結婚式を諦めないでほしい」と語る鈴木社長。新たに挙式希望者を募集している

 結婚式をプレゼントします―。

 コロナ禍でブライダル業界に逆風が吹く中、京都市左京区の式場運営会社「LLB」がチャペルでの無料結婚式の希望者を募ったのは昨年7月。「こういう時だからこそ家族の絆は大切。結婚式を諦めないでほしい」との願いからだった。挙式を中止、延期せざるを得なかったカップルからの応募が相次ぎ、経営は苦しいままだが、今年から2回目の募集を始めた。

 同社は、市内の式場「VICEO(ヴィセオ)」などを運営するが、昨年3月から挙式のキャンセルが相次いだ。「親や友人らに感謝を伝える場である結婚式の文化を衰退させたくない」。社長の鈴木将巨(まさお)さん(47)はそんな思いから、無料の挙式を発案。昨年7月に取り組みを取材し、紙面で紹介した。

 その後、関西を中心に70組以上の応募が舞い込んだ。「病気の母親に早くドレス姿を見せたい」「給料が減って挙式が難しくなった」…。20組限定の予定だったが、「さまざまな思いが寄せられ、決めきれなかった」。スタッフと相談し、全組の挙式を決断した。

 会場をくまなく消毒し、換気を徹底。約70人収容のチャペルは参列者を半数以下に絞った。有料で対応する披露宴でも、ケーキ入刀時に集まって写真を撮ったり、お酒をつぎ回ったりするのを制限した。

 昨年9月に式を挙げた向日市在住の30代の夫妻は「親や友達も喜んでくれて、とてもいい記念になった」と振り返る。昨春にイタリアで挙式予定だったが、感染の急拡大で渡航を断念。本紙記事でキャンペーンを知って応募した。「この機会がなければ新たに式を挙げる気持ちにはなれなかった。無料で最初は不安もあったけど、スタッフの方の対応がとても丁寧だった」

 昨年12月までに希望した全カップルが式を挙げ、喜びや感謝の声がたくさん届いたという。鈴木さんは「挙式自体が難しい中、『ありがとうございます』の重みが普段と違った。お金の対価としてのサービスではなく、お客さんの思いをかなえるためにスタッフも何ができるか必死に考え、人としての成長につながったと思う」と実感を込める。

 厚生労働省の人口動態統計(速報値)によると、昨年1~11月の婚姻数は49万2908件。前年同期と比べて12・8%も減るなど、ブライダル業界は厳しさを増す。同社も多額の赤字がのしかかり、1月の緊急事態宣言再発令で先行きは一層不透明になったが、無料結婚式は続けることにした。「前回はコロナが収まりきらず、式を辞退した人もいる。可能な限り続けることで、小さな式場でも少しは世の中を明るくできれば」と使命感を語る。

 チャペルでの人前式となり、ドレスやタキシード、ヘアメークのほか、プロフィル動画などが付く。食事や写真撮影は有料で対応する。年内に挙式できる人が対象で、15日までに申し込む。ヴィセオ075(754)0330。