長引く新型コロナウイルスの感染拡大が、社会に暗い影を落としている表れと言えよう。

 2020年の自殺者数がリーマン・ショック後の09年以来11年ぶりに増加に転じた。特に女性や小中高生の増加が目立つ。

 複合的な要因が絡み合って自ら命を絶ったとみられるが、コロナ禍の経済不安や家事などの負担増が背景にあると考えられる。立場の弱い人たちがより影響を受けている実態が浮かび上がった。

 警察庁が公表した自殺統計(速報値)によると、昨年の自殺者数は、7月以降大幅に増えて2万919人に上り、前年より750人多かった。京都府は32人増の355人、滋賀県は246人で6人減った。

 自殺者はかつて年間3万人を超えたが、ここ10年は地域のNPOや自治体などの取り組みが功を奏して減り続けてきた。

 なぜ再び増えたのか、詳細な分析が必要だが、「コロナ禍がさまざまに影響している可能性がある」(厚生労働省自殺対策推進室)という。増加の兆しを深刻に受け止めねばなるまい。

 男性の自殺者は1万3943人と依然多いものの、前年より135人少なく、11年連続で減った。片や女性は増加に転じ、前年比885人増の6976人と過去5年で最多となった。

 女性は男性に比べ、不安定な雇用に従事する割合が高く、より経済的打撃を受けがちだ。休校や外出自粛などで子どもや夫の在宅に伴い、家事や育児の負担、ストレスが増したとも考えられる。ドメスティックバイオレンス(DV)被害も増えているとされ、さまざまな要因が絡んでいるのだろう。

 コロナ禍の長期化により一層の状況悪化が案じられる。内閣府の有識者研究会は昨年11月、「女性への影響が深刻で『女性不況』の様相」と指摘、自殺やDVの相談体制強化を緊急提言した。国や自治体、NPOは弱い立場に置かれた人々の不安に寄り添い、支援する取り組みをいま一度見直してほしい。

 もう一つ心配なのは10代の自殺死亡率が年々高まっている点だ。11月までに小学生13人、中学生120人、高校生307人の計440人が亡くなり、1980年以降で最多となった。

 休校明け後の学校生活にストレスを感じたことなどが原因とみられている。思い悩む子どものSOSをどうキャッチするか、周囲の目配りが欠かせない。しっかり見守られていることが伝われば、子どもたちの心の安定につながるに違いない。

 コロナ感染拡大は「第3波」が続き、なお収束を見通せない。社会のストレスが一層高まれば、生活の困窮や不安から自らを追い詰めてしまうことになりかねない。さらなる自殺者の増加が懸念される。

 東京都内で今月、コロナ感染で自宅療養中の30代女性が「娘にうつしてしまったのではないか」と悩むメモを残し命を絶った。会員制交流サイト(SNS)を通じた相談窓口などへ気軽に悩みを打ち明けていれば、と悔やまれる。

 コロナ禍を巡る不安や閉塞(へいそく)感が深まる中、支えが必要な人を見逃していないだろうか。悲劇を未然に防ぎたい。