パン販売店が導入した対応レジ。持ち帰りと店内飲食がタッチパネルで切り替えられる(京都市中京区・進々堂寺町店)

パン販売店が導入した対応レジ。持ち帰りと店内飲食がタッチパネルで切り替えられる(京都市中京区・進々堂寺町店)

 10月1日から消費税率が引き上げられ、標準税率が10%になった。これまでの消費増税との大きな違いは、飲食料品などに軽減税率が導入されたことだ。所得が低い人ほど負担が重い「逆進性」を和らげる施策とされるが、現場は混乱が広がっていた。

 連載「迫る消費増税」の取材で見聞きしたのは、事業者の困惑ぶりだった。原因は今回の増税の「分かりにくさ」に尽きる。軽減税率の対象品を見極めるのは、クイズさながらだ。例えば料理酒。分類は酒類のため税率10%だが、塩を添加していれば飲用できないため調味料と同じ8%が適用され、大手スーパーでも線引きに迷っていた。同じ商品でも、店内飲食と持ち帰りでは税率が異なる。10月以降の買い物で不思議な感覚を受けた人も多いだろう。

 最もややこしいのは、政府が景気対策で導入したキャッシュレス決済時のポイント還元制度だ。登録した中小店舗で来年6月まで実施され、国費で最大5%のポイントが返ってくる。大手飲食チェーンのフランチャイズ加盟店は2%。店舗や買い方により食料品の実質税率は3、5、6、8、10%の5通りになった。

 こうした複雑な制度に翻弄されたのが、個人商店など地域の中小事業者だった。錦市場(京都市中京区)の鮮魚店は思案の末、利益を削って店内飲食と持ち帰りの税込み価格を統一した。飲食店や小売店を中心に、多くの企業が対応レジの導入や会計システムの変更、従業員教育などを迫られ、直前にイートインの椅子を撤去する店舗もあった。

 価格競争が激しいスーパーなどは、顧客の囲い込みに動いた。ポイント還元制度の対象外となる大手小売業は独自のポイント還元策や値下げで対抗。制度に参加するため資本金を減らして「中小企業」になる会社も続出し、ある小売店関係者は「制度の抜け穴を突く減資が横行し、体力勝負となる値下げ競争を引き起こした」と憤った。

 一方、軽減税率は水道・電気・ガス料金やおむつ、生理用品などは適用外だ。増税初日に取材した買い物客は「生活必需品なのにおかしい。倹約しないと」と話した。

 ポイント還元制度の当初の参加店は、対象の約4分の1にとどまり、高齢者を中心にクレジットカードやスマートフォンを持たない人には恩恵も少ない。低所得者や子育て世帯向けのプレミアム付き商品券は京都府内の申請率が2割と出足も鈍く、政府が鳴り物入りで導入した負担軽減策の効果はまだ十分とは言えない。

 肝心の景気は、米中貿易摩擦などの海外リスクで先行きに暗雲が垂れ込める。日銀が今月発表した企業短期経済観測調査(短観)や個人の景況感はいずれも悪化し、企業も家計も景気減退を実感していることが示された。収入の多寡にかかわらず全国民に負担を強いる消費税。その税収が将来の生活を支える社会保障に使われ、景気対策が機能するのか。厳しく見つめたい。