<京の知恵 しあわせの食 小宮理実>

 こんにちは、料理研究家の小宮理実です。2月最初の午(うま)の日を初午(はつうま)と呼びます。今年は2月3日です。京都の伏見稲荷大社では「初午大祭」が執り行われ、例年であれば商売繁盛、家内安全を祈願する人でにぎわいます。稲荷大社の神様の使いがキツネであることから、この日はキツネの好物である油揚げやからしを料理に使います。

 初午につきものなのは「いなりずし」です。近年は業界団体が2月11日を「初午いなりの日」としてアピールしているようです。いなり寿司の形は、稲荷山に見立て三角に。いや、キツネの耳に見立てたとも。お揚げさんはゆでて油を抜いて、だしと砂糖、しょうゆで甘く煮含めます。味に深みが出るように、黒糖を少し加えています。中のすし飯は具を加えるのが京都ならではかもしれません。ユズ皮、ニンジン、ゴボウは細かく刻んで、黒ごまも入れています。

 畑菜(はたけな)は菜の花に似た京野菜です。「畑菜のからしあえ」は、塩ゆでした畑菜の水をしっかり絞り、食べやすく切って、からしとしょうゆを溶いたものであえています。「白みそのおみそ汁」は、梅型に抜いた豆腐を浮かべたシンプルなもの。キツネの好物からしを添えました。

 「お揚げさんのしらすピザ」は、油揚げにしょうゆを塗り、オーブントースターで軽く焼きます。その上からネギ、しらす、チーズをのせて再びトースターで焼いて、仕上げに糸のりと一味をかけました。お子さんのおやつや晩酌のアテにも向いています。

 いなりずしを作る際、揚げを袋状にするときに穴が開いてしまったら。そんなときは、「甘揚げきつねうどん」の具にします。いつものおうどんがよりおいしく感じられたら、それはじっくり煮含めたお揚げさんのおかげです。

 「甘揚げの餅袋」は、甘揚げの中にやわらかくした餅を入れ、餅を加熱した時に使ったお湯を少し加えて温めます。お揚げにしっかり味が含んでいますので、お湯で大丈夫です。お餅がなければ、煮るときに溶き卵を回しかければ、それもまた立派な一品になります。そんなことから、わが家では、おいなりさんを作るときは、お揚げをやや多めに煮るようになりました。キツネの好物は、みんなも好物ということですね。(料理講座「幸せ運ぶフクチドリ」主宰)

ホームページ「料理研究家・小宮理実」(https://komiyarimi.com/)


◆小宮理実 こみや・りみ 1971年京都市上京区室町生まれ。おせち料理・行事食研究家。家庭で作る季節の行事食を伝えており、食育活動のほか、商品開発も手掛ける。著書「福を呼ぶ京都 食と暮らし暦」「京のおばんざい四季の味」。