西日本豪雨で内水氾濫が発生し、民家や府道が水没した尾藤口地区(7月7日、福知山大江町尾藤)=住民提供

西日本豪雨で内水氾濫が発生し、民家や府道が水没した尾藤口地区(7月7日、福知山大江町尾藤)=住民提供

 稲刈りの終わった里山の風景が、窓の向こうに広がる。豪雨から3カ月が過ぎたが、自宅の居間は畳を上げたまま。いつ襲ってくるかもしれない水害に、藤田修市さん(73)=福知山市大江町尾藤=は疲れた表情でつぶやく。「堤防が完成してから、ほぼ毎年浸水している。これでは本末転倒だ」

 本流の増水時に支流で行き場を失った水があふれ出す内水氾濫。7月の西日本豪雨では由良川の下流域を中心に少なくとも10カ所で発生した。藤田さんが暮らす由良川右岸の尾藤口地区では尾藤川が氾濫。泥水が床上1・5メートルまで押し寄せ、昨年張り替えたばかりという床板や壁紙を再び台無しにした。

 国土交通省は2004年の台風23号被害を契機に、由良川下流域で集落を堤防で囲む「輪中堤」の整備を進めてきた。由良川本流からの水害の恐れは軽減したが、堤防と水門で閉ざされた支流とその集落は、新たな浸水の脅威に直面するようになった。

 尾藤口自治会では、要望書を市に提出するなど、内水氾濫への対策を強く訴える。しかし、いつ着手されるかも全く見通しが立たない治水事業に、自治会長の藤田三喜さん(68)は「対策が協議されるのは市街地や大きな集落ばかり。住民の抱える苦しみは同じなのに…」と嘆く。

 一方、由良川の左岸で大規模な浸水が発生した大江町中心部。地元はもとより市からも、同地域に排水機場の設置を求める要望が国土交通省に上がっている。豪雨後、国や市が排水ポンプ車3台を同地域に配備したが、水害時の対応能力には限界があり、抜本的な解決には強力な排水機場の整備が不可欠だからだ。

 しかし、国交省側の反応は鈍い。福知山河川国道事務所の小長谷健副所長(51)は、たとえ排水機場を設置しても、洪水で由良川の水位が大きく上昇した場合、下流での堤防決壊を防ぐためにあえて、排水機場の運転を停止する事態も起きると指摘。「より甚大な被害を防ぐため、苦渋の決断となるが、ある程度の浸水は仕方がない」と説明する。

 由良川下流地域では、洪水時に本流の水位が少しでも低く保たれるよう、河道の整備や堤防のかさ上げなど総合的な対策を求める声が根強い。自宅が床上浸水した沖田正晴さん(65)=同町蓼原=は「欠陥のある堤防を造ったのなら、あらゆる対策を尽くすべきだ。雨が降ると夜も眠れない住民もいる。二度と水に漬からないよう、国は地域と真摯(しんし)に向き合ってほしい」と訴える。

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 <連載 豪雨の教訓 京都府北部の現場2> 7月、西日本豪雨が京都府を襲った。記録的な雨は山を崩し、川を氾濫させ、5人の命と多くの人の暮らしを奪った。豪雨が私たちに突きつけた教訓とは何だったか。府北部の現場を検証する。