ミャンマーの国軍が全土に1年間の非常事態を宣言し、クーデターを起こした。

 国軍総司令官が立法、行政、司法の全権を掌握し、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相をはじめ、与党の国民民主連盟(NLD)の関係者ら数百人を拘束したとみられる。

 2011年に民政移管されて10年。民主化の歩みを踏みにじる暴挙であり、軍政時代への逆戻りは認められない。

 日本を含む国際社会は、全員の解放と民政復活に向け結束して働きかけを強めるべきだ。

 国軍がクーデターの理由にしているのは、NLDが勝利した昨年11月の総選挙で有権者名簿などの不正がありながら、政府が問題解決に動かなかったという主張だ。

 だが、不正の具体的な証拠は示しておらず、日本や欧米の選挙監視団は「公平だった」と評価している。

 総選挙では、NLDが改選議席の8割以上を獲得し、国軍系の連邦団結発展党(USDP)の衰退ぶりは明白だった。

 議会定数の4分の1が軍人に割り当てられているものの、国軍の影響力低下に危機感を覚えて、クーデターに及んだとみるべきだろう。

 16年に発足した事実上のスー・チー政権の方にも、目立った成果があったわけではない。

 最優先課題に掲げた少数民族武装勢力との和平協議は停滞し、国軍によるイスラム教少数民族ロヒンギャの迫害では対応が不十分だと国際社会の失望を招いた。

 国軍の政治的影響力の排除に向けた憲法改正も、実現には至っていない。

 それでも総選挙で多くの票がNLDに集まったのは、国軍への根深い不信感が国民にあるからだ。

 政変の日は、選挙後初の議会が開かれ、新たな政府の顔ぶれを決める予定だった。

 その民主的手続きを国軍は力で押しつぶしながら「自由で公正な選挙」を行うという。正当性がなく、公正性も期待できないのは明らかだろう。

 ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」として、民政移管後、日本など外国からの投資が活発化している。

 軍政復活で国際社会が制裁を科せば、経済への悪影響も予想される。国軍もそんな事態を望んではいるまい。

 日本は長年、ミャンマーを経済支援してきた国であり、多くの企業が進出している。積極的に説得に当たる役割を果たせないか。