新型コロナウイルス対策の強化に向けたコロナ特別措置法と感染症法の改正案が、わずか2日間の審議で衆院を通過した。

 自民、立憲民主の与野党協議で、政府案から刑事罰を削除するなど合意した修正を行って可決した。きのう審議入りした参院でも3日に採決が行われる見通しだ。

 政府は、感染の急拡大を受けて1月に緊急事態宣言を再発令したが、十分に抑え込むことができずに10都府県でもう1カ月の延長が決まった。

 関連法改正は、再発令と併せて手詰まり打開を迫られたためだ。事業者らに命令し、罰則を科す強力な権限を知事に与える一方、措置を講じる要件や対象、その補償などが明確にされておらず、乱用への歯止めも十分といえない。

 コロナ禍で苦しむ人々を罰則で脅すやり方で感染抑止の実効性が本当に高まるのか、現場の負担増や混乱につながらないか。多くの懸念が積み残されている。

 焦点だった入院拒否者らへの懲役など刑事罰は、前科のつかない行政罰の過料に変更された。営業時間短縮の命令を拒んだ事業者への過料も政府案から減額したが、その根拠ははっきりしない。法改正の主眼が「罰則ありき」だったのは否めない。

 不透明なのが、緊急事態宣言の前段階に新設する「まん延防止等重点措置」だ。宣言同様に時短営業を命令し、応じなければ過料を科せるが、発令の要件、範囲は政令で定めるとして「グレーゾーン」のまま行政の裁量に委ねる形となる。

 与野党協議後の修正では、実施の基準の明確化や有識者の意見を聞き、国会に速やかに報告することなど、27項目も付帯決議に盛り込んだ。だが、これらに法的な拘束力はなく、国会の関与は限定的だ。

 菅義偉首相が「罰則とセット」と強調してきた事業者支援も煮え切らない。事業規模に応じた損失の補償を求める声に対し、付帯決議で「経営への影響の度合い等を勘案」との表現にとどまった。

 現行法の「お願いベース」から罰則による強制力を高めても、安心して休める環境がなければ実効性は望みにくい。感染隠しや検査回避などで逆効果になりかねず、最前線で対応する保健所の負担増も懸念される。

 憲法が保障する国民の移動や営業の自由を制約する以上、政府は実施の基準や支援策を明確に示していく必要がある。