川の中に閉じ込める治水からの歴史的な転換といえる。

 政府は、地域全体で水害対策に取り組む「流域治水」関連法案を国会に提出した。

 明治期から続く堤防やダムによって洪水を防ぐという発想は、限界に来ている。人口増に伴う住宅地の拡大や、気候変動による想定外の豪雨などで毎年、甚大な被害に見舞われ多くの犠牲者が出ている。

 流域治水は災害多発時代に向き合う新たな考えだ。ハードだけでなくソフトが重要になる。行政任せでなく、私たち住民も主体となるべく意識改革が求められる。

 正式な法案名は「特定都市河川浸水被害対策法等の一部改正」という。水防法や都市計画法、建築基準法などの改正を束ねており、施策は多岐にわたる。

 被害を軽減するため規制に踏み込んでいる。川幅が狭く、本・支流が合流するなど、氾濫しやすい河川周辺の指定区域で新築は許可制とする。雨水がしみ込む緑地は開発制限の対象だ。川沿いの田んぼなどに保全制度を導入する。

 浸水想定区域や避難ルートなどを示すハザードマップを、中小河川にも適用し、住民にリスクを知ってもらう。

 注目したいのは、国や都道府県、市町村の関係者、学識経験者らで構成する流域水害対策協議会の設置だ。浸水区域の土地利用や雨水対策の強化などを議論し、その結果は対策計画に反映される。

 法案には明記されていないが、住民も「必要と認める者」として参加することが欠かせない。

 1997年の河川法改正で、治水・利水に加えて、環境保全と住民参加がうたわれた。淀川水系流域委員会が発足し、住民も河川整備計画の議論に加わっている。

 協議会は得てして官主導の場になりがちだ。対策の土台となるデータを多角的に検証し、広い観点から議論できるよう、土木工学だけでなく環境や生物などの専門家を入れ、住民の生活に根差した意見を聴くべきだ。

 流域治水の道のりは長く、「百年の計」と言えるが、災害は待ってくれない。特に高齢者施設で水害による犠牲が相次いだ問題の対策は差し迫っている。法案には、市町村長は避難への助言、勧告ができるとあるが、施設だけで対応できないのが現状だろう。

 なぜ救えなかったのか検証し、避難支援の手だてを流域治水の計画に盛り込みたい。これまでの災害の教訓を洗い出すことで、実践的な流域治水になるはずだ。