新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ仕組みとして国が導入したシステムが、完全に機能しないまま4カ月間も放置されていた。

 感染者と濃厚接触した可能性を知らせるスマートフォン向けアプリ「COCOA(ココア)」について、厚生労働省は接触があっても通知されない状態が昨年9月から続いていたことを明らかにした。

 不具合があったのはアンドロイド版のアプリで、利用者全体の約3割にあたる。実際のスマホで動作試験をしていなかったため、障害を見落としていたという。

 しかも、インターネット上では昨秋にプログラムミスが指摘されていたのに厚労省は今年1月まで把握していなかったとしている。

 明らかに緊張感に欠けている。政府はコロナ対策への信頼を大きく揺るがす事態であることを肝に銘じるべきだ。

 アプリは、陽性と判明した利用者が保健所から発行される「処理番号」を登録すれば、1メートル以内、15分以上の接触があった他の利用者に通知が届く。昨年6月に運用が始まり、普及すれば濃厚接触者を探し出す保健所の負担を軽減できることなどが期待されていた。

 障害はバージョンアップ時に発生したとみられるという。運用中に改修が行われるのは、一般のアプリでもよくあることだ。ただ、4カ月もその不具合に気づけなかったのは異常だ。

 運用開始後も稼働状況をチェックし、問題があれば委託業者に対応を指示する体制は整っていたのか。作りっぱなしで終わっていたのではと疑わざるを得ない。

 そもそも、アプリは国の期待通りに普及しているとは言い難い。ダウンロード数は運用開始から約2カ月で1500万件を超えたが、それ以降は1千万件程度の上積みにとどまっている。

 政府は飲食店やイベントの主催者などに向け、客や来場者にアプリの導入を呼び掛けるよう求めている。だが、実際のコロナ対策に生かされているのか、不透明なままだ。陽性者の登録件数だけでなく、濃厚接触者への通知状況や、その後の相談、支援などフォロー体制についても国民に分かりやすく示す必要がある。

 菅義偉政権はデジタル化の推進を看板政策に掲げている。今月中旬にも始まるワクチン接種でも、膨大な記録を一元的にデジタル管理するシステムを導入する方針を示している。情報を適切に管理、運用し、国民が安心できる仕組みを整えるのは政府の責務だ。