自らの立場をわきまえず、軽率極まると言うほかない。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視と取れる発言をした。批判を受けて発言を撤回し、謝罪したとはいえ、どこまで反省しているのか疑わしい。

 組織委会長は、五輪開会式で開催国を代表して国際オリンピック委員会(IOC)会長と並んで世界のアスリートを迎える要職である。「五輪の顔」としての適格性に疑問符を付けざるを得ない。

 森氏は名誉委員として出席した日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと語った。

 席上、JOCの役員改選に向けた規定改正が報告され、女性理事の割合を40%以上にする目標が示された。これを受けた発言で、自身が会長などを歴任した日本ラグビー協会で女性理事が増えていることを例に挙げ、「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね」などとも述べた。

 五輪憲章はあらゆる差別を禁じており、とりわけ男女平等の理念は近年、大きな柱の一つになっている。森発言はこうした時代の流れに逆行し、国内外から厳しい批判を浴びても致し方ない。

 森氏が発言した際、居合わせた出席者からいさめる声はなく、笑いさえ漏れたという。JOC評議員らの見識も問われよう。

 森氏は翌日、記者会見に応じ、「五輪・パラの精神に反する不適切な表現だった。深く反省している」と謝罪した。

 だが会長辞任は「自分からどうしようという気持ちはない」と否定した。記者の質問にいらだち、開き直る場面も目立った。何が問題視され、批判を招いたのか、理解していないのではないか、と首をかしげたくなる。

 森氏はこれまでも度々失言癖を指摘されながらも組織の要職に就き、さまざまな意思決定に影響力を発揮してきた。議論よりも同調を良しとする日本社会のいびつさにも目を向けねばなるまい。

 五輪の理念を否定する発言は多言語で配信され、瞬く間に世界に広がった。新型コロナウイルスの感染拡大で開催が危ぶまれる中、自らの言動でさらに逆風を強めた森氏は辞任に値する。

 開幕まで半年を切ったが、世界の共感を得ずして五輪の成功は望めない。