「江戸時代の所有者不明の墓地がある」「相続人が全員死亡している」

 2011年の東日本大震災で津波に襲われた岩手県大槌町安渡地区。2年ほどが経過し、自宅を失った被災者らの移転先として、町が高台の土地を買収しようとしたところ、このような状況にあることが分かった。

 所有者が特定できなければ、買収交渉に乗り出せない。移転地が確保できないと、町の復興は計画通りに進まない。町の担当職員らの事務作業は、難渋を極めたという。

 困難な状況が生じたのは、ここだけではない。岩手、宮城、福島の被災3県では、最終的に必要とされた約1万8千戸の宅地造成を完了するのに、昨年の暮れまでかかった。

 所有者不明の土地は、災害復興や公共事業などの大きな妨げとなっていることが、震災を契機に顕在化したといえる。

 全国では、40年の時点で北海道の9割に相当する720万ヘクタールに達する恐れがある、ともされる。実効性のある対策を、早急に講じなければならない。

 法相の諮問機関・法制審議会の部会が打ち出したのは、民法や不動産登記法の改正要綱案である。

 土地の相続登記の義務化などを盛り込み、10日に答申する。これを受けて政府は、今国会に関連法案を提出し、成立を目指す方針だ。

 土地が所有者不明となってしまうのは、相続しても使う予定がなく、売却も見込めないといった事情から、登記をせずに放置される例が、後を絶たないためである。

 要綱案は、不動産の相続を知ってから3年以内の所有権移転登記と、名義人の住所や氏名が変わってから2年以内の変更登記を義務化する、とした。

 正当な理由もなく登記を怠れば、それぞれ10万円以下と5万円以下の過料を科す。

 また、親族間で相続した遺産の分割協議が進まない場合、10年が経過すると、自動的に法定割合通りに分割する仕組みを設ける、ともする。

 相続登記さえ法で義務付けておけば、所有者が誰なのか、はっきりする。所有者不明の土地問題は、やがて解消する、というわけだ。

 実際には、どうなのだろう。高齢化や健康上の理由などで、登記したいが、できないケースも想定されるのではないか。

 要綱案は、相続した土地の所有権を手放すことを申請して承認されれば、国庫に帰属させる制度の新設を唱えている。

 土地の管理コストは、所有者が負担すべきだとして、申請者に10年分の管理費用相当額を納めさせるという。

 これでは、土地を手放そうとしても、金銭面で対応できない人もいそうだ。

 所有者が明らかになっても、土地を利用できないようでは、新たに「空き地問題」が生じてしまう。

 要綱案の対策は、法務省や国土交通省を中心にした取り組みの「総仕上げ」と位置付けられている。登記の義務化にとどまらず、現状に沿ったきめ細かな施策と配慮も必要だ。