菅義偉首相肝いりのデジタル改革関連法案が近く、閣議決定され、国会に提出される。

 行政システムだけでなく、国民の個人情報の扱いを大きく変える法案である。丁寧な説明と十分な審議が欠かせない。

 関連法案は、「デジタル庁」設置法案など5本の新法案と、個人情報保護法など約60本の改正案を束ねた関係整備法案の計6法案で構成する。

 新設のデジタル庁に国や地方の情報システムを集約し、マイナンバーや個人情報を直結させ「情報の利活用」を進めるという。菅首相が唱える「縦割り打破」を象徴し、政府は行政の効率化や利便性向上を強調する。

 だが、情報漏えいや悪用のおそれもつきまとう。デジタル化がもたらす負の側面にも十分注意を払わなくてはならない。

 懸念の一つが、地方自治体が独自に設けてきた個人情報保護条例などを全国で統一することだ。これについては、自治体から疑問の声が上がっている。

 社会保障などで繊細な個人情報を扱う自治体は、国に先行して厳格な個人情報保護条例を作ってきた経緯がある。多くの自治体は個人情報が関わるシステムの外部接続を禁じている。

 全国市長会は昨年秋、統一化について、現実にどのような支障が生じているかを明確にすることや、制度改正が必要な場合には自治体の意見を十分聴くことなどを国に求めた。

 東京都あきる野市議会など、慎重な対応を求める意見書を可決した地方議会も少なくない。

 こうした声に、政府はしっかり応える必要がある。

 マイナンバーが関わる領域が拡大することにも注意が要る。

 関連法案には、健康保険証や運転免許証、医師免許など国家資格とマイナンバーをひも付けするための法改正も盛り込まれている。

 だがマイナンバーは本来、税と社会保障、災害対策の3領域に限定され、カード取得は任意とされてきたはずだ。

 事実上の取得強制につながらないだろうか。ひも付け先が増えれば、個人情報が流出する危険性も高まる。どう防止するのか、政府は具体的な対策を示さなくてはならない。

 法案の審議の仕方にも問題がある。菅政権は6法案をまとめて「束ね法案」として提出し、一括審議・成立を目指す。

 安倍晋三前政権が多用してきた手法でもある。

 だが、背景が異なる複数の法案を一緒に扱うため、問題点が多岐にわたっても内容を深めにくい。生煮えのまま審議が打ち切られる懸念は拭えない。テーマごとに論点を精査するなど、丁寧に議論する姿勢が不可欠だ。

 デジタル化を名目に国民の情報を集約しようとする一方で、政治や行政の透明性を向上させる発想がないのも気になる。

 北欧では政治資金収支などもオンラインで閲覧できる。政治活動や行政運営に関する情報に国民がアクセスしやすくすることも、デジタルを活用した「情報の利活用」の重要な側面ではないか。