沖縄県・尖閣諸島周辺で、中国海警局の船舶による領海侵入が繰り返されている。

 中国では1日、海警局に武器使用などを認める「海警法」が施行された。海上権益を守るため軍と海警局の協力推進も掲げており、日本や南シナ海沿岸国などへの圧力は従来に増して高まっている。

 中国が独自の領有権を主張する尖閣諸島の実効支配への動きを本格化させ、南シナ海でも活動を活発化させるとの観測がある。

 こうした状況では偶発的な衝突が起きる可能性も否定できない。

 周辺国との摩擦をいたずらにあおるような法の制定は理解に苦しむ。強く自制を求めたい。

 海警法は、中国領海などの「管轄海域」で航行、操業する外国船を識別し、違法行為があれば追跡できるとする。領海侵入すれば拿捕(だほ)できることも盛り込んだ。

 尖閣諸島周辺で操業する日本の漁船が対象にされる懸念がある。

 昨年、尖閣諸島周辺の接続水域で確認された中国公船は過去最多の333日を数え、領海への長時間の侵入も相次いだ。

 法施行をにらみ、「管轄海域」に取り込むための既成事実づくりを進めていたとも考えられる。

 その「管轄海域」は条文にも具体的な説明がなく、適用される範囲ははっきりしない。海洋進出を都合よく理屈づけるため、あえて曖昧にしている可能性もある。

 同法には航行の制限も含まれ、国際ルールを逸脱しているとの指摘もある。国内法を優先する姿勢は、各国の懸念を深めるだけだ。

 中国の海洋進出を巡っては2016年に国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が、中国が南シナ海に設けた独自の境界線「九段線」には法的根拠がないと判断した。

 しかし、中国は判決を受け入れておらず、その後も同海域の実効支配強化の動きを止めていない。

 「管轄海域」を盾に今後も強硬姿勢をとり続けるなら、国際社会からの批判はいっそう高まろう。

 菅義偉首相はバイデン米大統領との電話会談で尖閣が日米安保条約の適用対象であると確認し、先週の日英外務・防衛閣僚協議でも海警法への強い懸念を共有した。

 ただ、それだけでは偶発的な事態は防げない。日中の防衛当局間には「海空連絡メカニズム」があるが、緊急時のホットライン開設に向けた協議を急ぐべきだ。

 尖閣を巡る緊張はあっても、日中は経済などの分野で独自の関わりを持つ。重層的な対話の回路を閉ざしてはなるまい。