水位低下で破損する可能性が明らかになった大野ダムの巡視船の係留設備(南丹市美山町)=京都府提供

水位低下で破損する可能性が明らかになった大野ダムの巡視船の係留設備(南丹市美山町)=京都府提供

 台風19号で課題に浮上したダムの事前放流を巡り、京都府が大野ダム(南丹市)で今年予定していた実証実験が、思わぬ壁にぶつかっている。昨年の西日本豪雨を受け、洪水に備えて放流する目標水位を5メートル引き下げて貯水能力を高める計画だったが、実施段階になってダム湖にある設備が破損する可能性があることが判明。目標水位まで下げるには工事が必要で、由良川流域の自治体からは早期対応を求める声が上がっている。

 西日本豪雨では、貯水能力が限界に達した愛媛県のダムが大量の水を放流する「緊急放流」を行い、下流域で甚大な浸水被害が発生、死者も出た。国の有識者会議は緊急放流を避けるため、事前放流で水位調節する機能の強化を提言。府も検討会を設置し、今年3月に大野ダムでの対策案をまとめていた。
 大野ダムではこれまで、大雨に備えた事前放流の目標水位を標高155メートルとしていた。府の案では前線に伴う府北部の24時間予測雨量などの基準を追加した上で、目標水位を150メートルに設定。今年の出水期に実験して放流水の濁りや付属設備への影響を調べ、問題がなければ本格的に導入する予定だった。
 しかし実験に向けて動き始めた今春、ダムの巡視船用係留場が標高155メートル、発電用取水管の除じん設備が153メートルの位置にあり、それ以下に水位を下げると、水面に浮く形で設置されている両設備がバランスを失い、破損することが分かった。府によると、検討会では放流管ゲートや発電用取水管は図面で確認していたが、係留場や除じん設備は想定していなかった、という。担当者は「国の提言を受け急ピッチで案をまとめた。具体的には本年度詰めていく予定だった」と説明する。
 府は5月下旬に、水位を標高154メートルに下げる実験を実施した。今月28日には、一時的に係留場を取り除き153メートルまで下げる実験を予定する。ただ当初計画していた150メートルに下げるには、設備の改修工事にかかる予算措置が必要なため、実施は来年度以降になるという。
 水位を標高155メートルから150メートルに引き下げた場合、ダムの貯水能力は約200万立方メートル向上し、水をせき止めている堤体1メートルのかさ上げと同等の効果が見込まれている。下流自治体の防災担当者は「緊急放流となれば住民に避難を呼び掛けるしかできず絶望的な状況になる。早く事前放流の充実を実現してほしい」と求める。
 台風19号では関東や東北のダム6カ所が、事前の水位調節なしに緊急放流を実施。西日本豪雨の教訓が生かされていないとの批判が広がっている。府河川課は「課題を一つずつクリアして取り組んでいる。河川管理者や市町と連携し、可能な限り早く進めていきたい」としている。