京都市が2021年度当初予算案を発表した。新型コロナウイルス対策費が膨らみ、一般会計は初めて1兆円を超えた。

 深刻な財源不足の中、主催イベントの休止や人件費削減などを進め、新規や充実させる事業の数は前年度の3分の1にとどめた。

 門川大作市長は「命と暮らしを守り抜く予算」と強調した。休業や時短要請の長期化で苦境にある市民の下支えに全力を挙げ、限られた予算でも効果を実感できる施策運営にあたらねばならない。

 コロナ対策では、所得が減った市民への住宅確保給付金や離職を余儀なくされた人への就労支援に向けた費用、中小企業の資金繰りを支援する融資制度の預託金などを盛り込み、一般会計の4分の1近くを占める2464億円を計上した。沈滞した地域経済の底上げは急務で、観光や環境などの分野でコロナ後を見据えた事業を進める。

 裾野が広い観光産業の立て直しに向けては、中止や延期が相次ぐ修学旅行生の呼び戻しへ、京都滞在中に陽性者と濃厚接触した可能性がある生徒の帰宅経費を補助する。感染症や災害発生時の備えを強める観光事業者らの取り組みも支援する。

 危機対応力の向上は観光客を迎える市民の安心にもつながろう。

 ただ、コロナ禍は観光の比重が高い経済構造の弱点も浮き彫りにした。足腰の確かな地域産業へ体質強化を図り、新たな事業を育てる視点も欠かせない。

 市は50年までに二酸化炭素の市内排出量を実質ゼロにする目標を掲げる。食品ロスの削減へ事業者のAI(人工知能)活用を支援するなど、幅広い分野で中小企業のデジタル化推進を支援する。新技術の導入や設備投資を促す具体策が求められよう。

 昨秋時点で500億円が不足すると見込まれた財源は、事務事業の見直しなどで215億円をひねり出した。だが、将来の借金返済に備えた基金を取り崩さなければ予算が組めない危機的な状況は解消されていない。

 地下鉄事業はコロナ禍で落ち込んだ乗客の回復が見込めず、運転資金不足で経営健全化団体への再転落が確実とみられている。

 市は今後、公共施設使用料や敬老乗車証の利用者負担金引き上げも視野に議論を始めるという。

 財政再建への道筋を示しながら、市の将来像をどう描くのか。これまで以上に分かりやすく説明する必要がある。