山裾の民家まで押し寄せた土砂や倒木。ガラスや物置が壊れる被害があった(宮津市日置)

山裾の民家まで押し寄せた土砂や倒木。ガラスや物置が壊れる被害があった(宮津市日置)

 京都府宮津市日置の浜地区は豪雨から3カ月以上が経過した現在も、土砂崩れや倒木による危険な状態にあるとして避難指示が解除されていない。市は年内にも復旧工事に取り掛かる方針だが、仮住まいでの生活を余儀なくされている住民は「家には早く戻りたいが、同じような災害がまた起こるかもと考えると不安だ」と、複雑な思いを抱えている。

 7月8日の午前9時すぎ。「ゴー」という濁音とともに土砂崩れが発生した。土砂と倒木が自宅めがけて迫ってくる瞬間を目の当たりにした上田実さん(79)は「とにかくびっくりして、頭の中が真っ白になった」と振り返る。市は同日午後2時、同地区の2世帯5人に避難指示を発令し、現在も継続している。

 上田さんは20年ほど前に大阪府から宮津に移住し、妻(75)や愛犬と静かな生活を送っていた。3年前、府の調査で上田さんの自宅周辺が土砂災害特別警戒区域に指定された。上田さんらは地元自治会と早急な対策を市に求めたが、市内に同じような危険区域が百カ所近くあることなどから対応が進まなかったという。

 浜自治会長の瀬戸享明さん(62)は「日置を選んでくれた人たちが、災害で外に行くようなことにはしたくない。また安全に生活してもらえるよう、自治会としても対策を講じていきたい」と強調する。市は、今回崩落した斜面と民家の間に高さ約2メートルのコンクリート壁を設けるなどの工事を計画。国や府と調整中という。

 上田さんは現在、市街地にある市営住宅で生活している。「早く自宅に戻りたいが、やはり怖い」と心境を吐露する。

 住宅に土砂が流入する被害を受けた市街地の池ノ谷地区も、台風接近の度に避難指示が発令されるなどして高齢住民の負担は大きい。上野祐次さん(85)と友子さん(87)夫婦は「今は避難勧告で逃げるようにしている。避難所と自宅を行ったり来たりして大変だ」と苦労を明かす。

 2人は豪雨発生後から2週間近い避難生活を経験し「あの日々は忘れられない」と友子さん。豪雨以降は、台風の進路や雨量を注意深く見守り、枕元には薬や着替えなどを詰めたリュックサックを置いて眠っている。

 住宅の損壊などで避難していた住民たちも少しずつだが自宅に戻りつつある。祐次さんは「今からよそに行くわけにはいかない。ずっとここ(池ノ谷)に住む」と前を向く。

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