増長天立像(重要文化財 石山寺蔵 平安時代)

増長天立像(重要文化財 石山寺蔵 平安時代)

男神坐像(建部大社蔵 平安時代)

男神坐像(建部大社蔵 平安時代)

 風光明媚(めいび)な瀬田川のほとり、多くの平安貴族が訪問した石山寺。本堂に安置されている増長天立像は、典雅な作風を持っています。

 鎧(よろい)と服は、木に彩色をしない素地に金銀のみの文様で上品な仕上げ。金や銀の切箔(きりはく)や截金(きりがね)文様がびっしりと施されていて、とても煌(きら)びやかな服装です。一方、お顔の色は緑色、髪の毛はなんと赤毛で、さらに金の天冠台がのるという派手な配色です。顔は華やかだけれど、服は木の色と金銀色だけという対比が絶妙です。面相は眉毛を寄せて大きく口を開けて相手を威嚇する表情ですが、つぶらな瞳で柔和な印象です。怒り顔さえも優雅なのが平安貴族に好まれた顔なのです。

 石山から瀬田の唐橋を東に渡ると、近江国一宮の建部大社が鎮座しています。当宮の女神坐像(非出陳)は近江を代表する神像の一体。平安時代後期の作で、右袖でお顔の下半分を隠す独特な姿で有名です。はっきりと顔を見せたくないというのでしょうか。同じく男神坐像は、高い巾子冠(こじかん)をかぶり、頭部が大きく目立ちます。ところが体部は衣文(えもん)を刻まず、ぼんやりとした表現です。こちらも顔はいいけど、体までははっきりさせたくないという姿なのかもしれません。そう簡単に姿を全部は見せへんで、というのが神様の気持ちなのかもしれません。(大津市歴史博物館 寺島典人)

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 大津市内の10社寺でつくる湖信会設立60周年、日本遺産登録を記念した大津市歴史博物館の企画展「神仏のかたち-湖都大津の仏像と神像」(同館、びわ湖大津観光協会、湖信会、京都新聞など主催)に合わせて、大津の仏教文化を同館学芸員に紹介してもらいます。

 湖信会の10社寺は、浮御堂(満月寺)、西教寺、延暦寺、日吉大社、近江神宮、三井寺(園城寺)、石山寺、建部大社、岩間寺(正法寺)、立木観音(安養寺)です。

 ■企画展「神仏のかたち-湖都大津の仏像と神像」は11月25日まで、大津市歴史博物館(同市御陵町)で開催。月曜休館。有料。