トップが代わるだけで済む問題ではないだろう。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞任を表明した。自身の女性蔑視発言に国内外で反発と批判が広がり、引責に追い込まれた。

 このままでは「五輪の顔」の役割を果たすことはできず、辞任は当然といえる。

 新型コロナウイルス流行で史上初の延期となった五輪は、開幕まで半年を切って組織委トップが交代する異例の事態となった。

 体制の立て直しが急務だ。あらゆる差別に反対する五輪憲章に基づく大会として信頼を取り戻せるか、コロナ禍での開催意義を示せるのかが問われよう。

 問題となった「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などの発言から1週間余り。森氏は批判を受け、翌日に発言を撤回、謝罪したが、その会見時の居直ったような態度がいっそうの反発を招いた。

 選手やスポンサー企業からも厳しい声が相次ぎ、大会ボランティアの辞退者が続出。当初は不問に付した国際オリンピック委員会(IOC)も「完全に不適切だ」と批判に転じた。コロナ禍で懐疑論が高まっている五輪開催への致命傷になりかねないと判断したといえよう。

 反差別への意識の高まりを甘く考えていたのは森氏だけではない。組織委や政府・与党、IOCも当初、ジェンダー平等や多様性を軽んじたトップの発言への問題認識と対応が鈍く、森氏続投を擁護した。それが国内外の不信感をさらに高めたのは否めない。

 旧態依然とした組織体質の根深さを物語ったのが、当の森氏が川淵三郎・元日本サッカー協会会長に行った「後継指名」だ。組織的に選ぶべき会長ポストを「密室」で受け渡すやり方が疑問視され、白紙に戻されたのは当然である。

 そもそも森氏の発言は、スポーツ団体の女性理事増員を巡ってだった。組織委は選考委員会を設けて体制刷新を目指す方針だが、問題となったジェンダー平等などに向けた改革姿勢も明示すべきだろう。

 五輪準備は3月に聖火リレーが始まり、テスト大会や観客受け入れの判断など開催の可否に関わる重大局面を迎える。スピード感を持って取り組む必要がある。

 スポーツ界だけでなく、日本社会に根強く残る性差別意識や、権力者に忖度(そんたく)して議論を避ける意思決定の在り方も問われていることを忘れてはなるまい。