五輪開幕が約5カ月後に予定される中、異例のトップ交代だ。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子前五輪相が決まった。女性蔑視発言で辞任した森喜朗氏の後任である。

 森氏の発言は世界中に広がり、あらゆる差別を許さないとする五輪憲章や大会コンセプト「多様性と調和」にそぐわない-などと非難された。東京五輪のイメージは大きく傷ついたといえる。

 橋本氏が選ばれたのは、7度の五輪出場や国会議員としての政治経験が考慮されたとみられる。大会への信頼を取り戻すと同時に、開催準備や競技運営を担う組織委を立て直すことが期待されよう。

 ただ、新会長選出を巡る手続きには不透明さがつきまとった。

 森氏が川淵三郎・日本サッカー協会元会長を事実上後継指名したことが批判を招き、組織委は後任を選ぶ検討委員会を設け、国際的知名度や組織運営能力など5項目の観点を示した。

 だが、会議は全て非公開だった上、検討委メンバーの氏名も最後まで公表されなかった。後継者を橋本氏とする流れは、首相官邸の強い意向が働いたとも指摘されている。新会長の選定が「密室」で進められたとの疑念は拭えない。

 森氏の発言を受け、組織委はジェンダー平等の推進チーム設置や理事会・評議員会の女性比率を高める方針を打ち出している。橋本氏はこうした改革案を着実に実行する先頭に立たねばならない。

 新型コロナウイルス感染の長期化で、五輪実現への道のりは極めて厳しくなっている。世論調査でも、予定通り今夏の開催を望む人は少数派にとどまる。

 来月下旬にスタートする聖火リレーについても、島根県知事がコロナ対策を理由に中止に言及し、全国知事会長が具体的な実施方法を早急に示すよう求めるなど、不協和音が聞こえ始めた。

 五輪開催の最終決定権は国際オリンピック委員会(IOC)が握るが、決断のタイムリミットは迫っている。

 橋本氏は会見で「安全最優先の大会実現」を強調した。どういう形で開くのか、この時期に開催する意義は何か-を、改めて国民に説明できるかが問われている。

 就任に伴い、橋本氏は五輪相を辞任したが、自民党参院議員の立場はそのままだという。これでは中立性を疑問視されかねない。

 組織委トップとしての公正な業務執行に支障が出ないよう、身の処し方を考えるべきだ。