国民の生活実感とあまりにかけ離れている。

 東京証券市場で日経平均株価が3万円を超え、バブル景気にあった1990年8月以来、30年半ぶりという株高が繰り広げられている。

 長引く新型コロナウイルス禍で、実体経済は飲食、運輸関連の苦境や失業者の増加など深刻な打撃が続いている。

 この中での歴史的な株高は、ワクチン接種や業績回復企業の拡大への期待先行だけでなく、各国の大型経済対策と金融緩和であふれた資金の流入が生んでいるとされる。

 市場で存在感を高めているのが日銀だ。導入から10年になる上場投資信託(ETF)の買い入れ策は、保有額が時価で50兆円規模に上り、日本株の事実上の最大株主になったとみられている。

 幅広い株式銘柄を束ねたETFの大量購入で株価を下支えする半面、経済実態を反映しない「官製相場」を生み、市場機能をゆがめているとの批判も強まっている。

 副作用が膨らむ緩和政策を再点検し、見直す必要がある。

 日銀がETF購入を始めたのは2010年12月。政策金利がゼロに近づき、利下げ効果が乏しい中、株式市場を通じた経済活動の活発化を狙った。

 当初4500億円だった年間限度額はアベノミクスの大規模緩和で拡大し、現在は最大12兆円まで膨れ上がった。保有額の時価は昨年、最大だった年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を超えたとされる。

 本来、中央銀行が相場に介入することは「禁じ手」とされ、他の主要国では行われていない。日銀の存在感の高まりは弊害も大きくしている。

 とりわけ企業業績への期待を株価に反映させる市場の価格形成が損なわれていることだ。

 日銀がETFを通じて実質的に5%超を保有し、大株主となっている企業は、東証1部上場の約400社に上るとされる。実力以上に株価がかさ上げされ、日銀が「物言わぬ株主」のために経営監視の機能も弱まっている。投資家側も「日銀が買い支えてくれる」とリスク意識の低下が指摘されている。

 最近の株高で日銀保有のETFには15兆円超の含み益があるとされる。だが、将来的に株価が下落して評価損が出れば国庫への納付金が減り、財源不足が国民の負担になる恐れがある。

 ただ、ETFの買い入れの減額や売却による保有資産の縮小は、金融市場の混乱を招きかねないジレンマを抱えている。

 日銀は、2%の物価上昇目標達成がコロナ禍もあって見通せない中、さらなる大規模緩和の長期化を見据えた政策点検を現在進めている。

 その中で、当面はETF購入を柱として続けつつ、株価上昇時は買い入れを抑制することを明確化する検討に入っているという。

 膨らみ続けるETF購入の副作用に歯止めを掛け、市場機能の正常化に向けて出口政策を多角的に検討していく時期に来ている。