ミャンマー国軍がクーデターで全権を握って1カ月が過ぎた。

 民意を踏みにじられた市民の怒りは収まらず、抗議デモが各地で続いている。軍政は弾圧を強め、市民に死傷者が出るなど緊張は高まる一方だ。非暴力のデモに参加した市民に銃口を向ける蛮行は到底許されない。

 国軍は先月1日、全土に1年間の非常事態を宣言した。国民民主連盟(NLD)が勝利した昨年11月の総選挙で不正があったと主張し、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相ら多数の関係者を拘束した。

 若者を中心に多くの市民が抗議に立ち上がり、公務員らも職務放棄して国軍への「不服従運動」に加わっている。1988年の民主化運動を上回る盛り上がりだ。

 二度と軍が牛耳る国に戻したくないとの市民の思いは強い。民政移行後10年で自由の大切さを知った市民は以前のように国軍に従順ではない。粘り強い抗議は、国軍にとって誤算だったに違いない。

 抗議デモを伝える会員制交流サイト(SNS)に投稿された映像は銃声に市民が逃げ惑う惨状を映し出している。国連人権高等弁務官事務所によると、先月28日には全土で少なくとも18人が死亡、最多の犠牲者数となったという。

 米国や欧州連合(EU)は強く非難し、追加制裁を科す構えだ。ところが国際的な反発をよそに、国軍に自制の動きは見えず、残念だ。経済的な結びつきが強く、影響力を持つ日本や中国がどう動くかが事態打開の鍵となろう。

 日本は「暴力を直ちに停止するよう強く求める」(加藤勝信官房長官)とデモへの弾圧を非難しつつも、制裁には慎重だ。だが政府開発援助(ODA)停止を含め、民意をないがしろにする軍政は容認しない姿勢を示す必要がある。

 さらに国軍幹部との独自のパイプを生かして説得を急ぎ、民主化に目覚めた自国の現状を直視させて民政復帰を促すべきだ。

 「アジア最後のフロンティア」と呼ばれるミャンマーには400社以上の日本企業が進出する。日本を含む外国企業が一斉に撤退する経済的ダメージは、国軍も避けたいと見てよい。日本企業の人権尊重の姿勢も問われよう。

 中国も隣国の政情不安は望まないだろう。国際社会の一員としての役割を担わねばならない。

 ミャンマーのチョー・モー・トゥン国連大使は「国際社会の強力な行動が必要だ」と国連で訴え、解任された。その必死の呼び掛けを真摯(しんし)に受け止めたい。