1975年10月に円山公園音楽堂で行われたジャズとブルーグラスの競演 (川村さん提供)

1975年10月に円山公園音楽堂で行われたジャズとブルーグラスの競演 (川村さん提供)

「この音は残さなければいけないと思った」と振り返る川村輝夫さん(京都市内)

「この音は残さなければいけないと思った」と振り返る川村輝夫さん(京都市内)

 1960~70年代にKBS京都(京都市上京区、旧・近畿放送)がラジオ放送した音源が続々と復刻されている。音源は、60年代に発売中止になったフォーク・クルセダーズの「イムジン河」をラジオでかけ続けた“伝説のディレクター”川村輝夫さん(79)が自宅で保管していた。「高石ともやとザ・ナターシャ・セブン」や円山公園音楽堂でのジャズとブルーグラスのバンドによる競演など「京都音楽史の貴重な記録」がCDでよみがえっている。

 「当時テープは高価で、録音の上に上書きして使っていたが、『この音は残さなければならない』と思ったものは、ひそかに持ち帰って保管してきた」。川村さんは振り返る。

 大阪府池田市の自宅にある蔵で保管していたため、録音状態も良好であることが分かり、「KBS京都・秘蔵音源シリーズ」として復刻されることが決まった。第1弾は、1972年2月6日に京都シルクホールで行われた「高石ともやとザ・ナターシャ・セブン」の1周年リサイタル。3時間にわたる模様が昨年2月に3枚組(4180円)でCD化され、発売された。ゲストとして人気カントリーシンガーの諸口あきらさんが5曲を披露している。

 続いて第2弾は、75年10月11日に円山公園音楽堂(東山区)で実況録音されたトランペット奏者・西代宗良さん率いるジャズバンドとバンジョー奏者・渡辺三郎さん率いる「スーパー・ピッカーズ」の競演で、今年2月24日に3枚組(4180円)で発売された。

 渡辺さんは70年代にブルーグラスの本場である米国でレコードデビューし、帰国後はブルーグラスの普及に尽力したが、記録された音源はごくわずかとされる。宝塚市に住んでいた渡辺さんが2019年に69歳で亡くなったことが今回の復刻を後押ししたという。

 「今では信じられないかもしれないが、70年代の京都ではブルーグラスが新しい音楽として若者の人気を集めていた」と京都在住の音楽ライター小田晶房さん(53)は話す。「ブルーグラスの躍動感が横綱相撲的なジャズとぶつかり合って独特のあつれきを生み出している時代のドキュメントとして、とても貴重な記録」

 これに続き、渡辺さんが米国から帰国後の75年に山科のスタジオで行ったブルーグラスのセッションの録音が第3弾として3月24日に発売。4月には、60年代後半に活動した伝説のバンド、ジャックスが69年に公開番組「みんなで歌おうフォークフォーク」に出演した際の模様をCD化する。「8月に解散する直前のジャックスの貴重な録音」という。後半では高石ともやさんが登場し、司会は元フォーク・クルセダーズのきたやまおさむさんが務めている。

 川村さんは「一連のシリーズで奇跡的に生き残った音源を通して時代の熱気を感じてほしい」と話す。