府立植物園に寄贈された彬姫桜を見つめる中井さん。早咲きで近々開花する見込み(京都市左京区・府立植物園)

府立植物園に寄贈された彬姫桜を見つめる中井さん。早咲きで近々開花する見込み(京都市左京区・府立植物園)

彬姫桜の写真を手にする佐野さん(京都市右京区・植藤造園)

彬姫桜の写真を手にする佐野さん(京都市右京区・植藤造園)

 「桜守」として知られる16代目佐野藤右衛門さん(92)が近年、府立植物園(京都市左京区)に対し、自身の生み出した京都ゆかりの貴重な桜の寄贈を続けている。佐野さんと植物園は長年にわたって協力関係にあり、佐野さんは「公共の場で末永く保存してもらい、多くの来園者に楽しんでもらいたい」と期待を寄せる。

 佐野さんが会長を務める植藤(うえとう)造園(右京区)は、「御室の桜」で知られる仁和寺に代々仕え、全国の桜の調査や保存、新品種の育成などに携わってきた。佐野さんの祖父や父は、1924(大正13)年の植物園開業にも奔走。終戦後は園の敷地が米軍に接収されて荒廃したが、佐野さんらが桜並木を復活させるなど61年の園再開に尽力した。

 近年の桜の寄贈は2015年から。もともとつながりのあった同園の中井貞(ただし)樹木係長(50)が「貴重な桜の保全をお手伝いしたい」と打診し、佐野さんが快諾。これまでに、▽八天桜▽彬姫(あきひめ)桜▽丁子桜▽近畿豆桜▽萌紅(めぐ)桜―の計5本が園内に移植された。いずれも自生していた親木から採れた種をまくなどし、新しい特徴を選抜した新品種という。

 早咲きが特徴の彬姫桜は、佐野さんが戦後復興期に御池通に咲いていた桜を持ち帰り、その種をまき続けて生み出された。花色が白の親木と異なってかれんなピンク色で、名前は花見に訪れた故寛仁親王の長女彬子さまにちなんで付けられた。

 このうち1本(高さ2・5メートル)が昨年1月、植物園北山門近くの桜品種見本園に植樹された。今ではしっかりと根付いて、つぼみもほころびかけており、来週あたりに開花する見込み。バックヤードにある近畿豆桜を除き、残りの3本も今春に花見を楽しめるという。

 園には現在、約170品種500本の桜が植わる。中井さんは「京都由来やここでしか見られない桜を増やし、桜の多様性を伝えるのが園の役割。佐野さんが作り出した桜は貴重で身が引き締まる思いだが、やりがいがある」と話す。佐野さんは「京都の気候風土の豊かさが植物園には凝縮されている。(寄贈は)娘を送り出すような気持ちだが、多くの人が憩いながら自然に興味を持つきっかけになれば」と笑みを浮かべる。