限られた場面ではあるが、人が運転しなくてもよい車が、きのう発売された。世界でも一番乗りだという。

 ホンダが、自動運転技術を搭載した高級セダンである。

 高速道路での渋滞時に、搭載されたシステムが走行を担う。ドライバーは前方を注視する必要がなくなり、車内のモニターで動画を観賞したり、スマートフォンを操作したりできる。

 時速50キロ以上になると、ドライバーに運転を促し、応じない場合は路肩に緊急停止する。

 運転の負担を大幅に減らし、事故の起きる確率を低くするとみられている。

 自動運転技術の導入は、地球温暖化対策である「脱ガソリン」とともに、車の在り方に大きな変革をもたらすとされる。

 政府は、国の基幹となっている自動車産業が、こうした潮流に乗り遅れてしまうことに、強い危機感を抱いていたようだ。

 一昨年、道路運送車両法や道路交通法を改正して、自動運転の車が公道を走行できる環境を整えてきた。

 世界初の市販は、官民連携の成果ともいえる。

 ただ、自動運転を5段階で分類すると、そのうちの「レベル3」を達成したばかりだ。降雨で視界が悪くなるなど、システムが運転できなくなれば、ドライバーに交代しなくてはならない。

 海外に目を向けると、昨年10月に運輸に関する規制が緩和された米アリゾナ州では、自動運転の配車サービスが始まった。そこに、運転手の姿は見られない。

 中国でも、一定の条件下でシステムが全てを操作するタクシーが登場した。各国が、実用化に向けて激しく競い合っている。

 自動運転技術には、運転手の不足する過疎地で、高齢者らの交通手段を確保することなどが期待されている。

 今後は、ドライバーが不要となる「レベル4」以上の実現が、避けて通れない課題となろう。

 気になるのは、万が一、自動運転中に事故があった場合、どう対処するのか、という点である。3年前、米国で起きた自動運転の試験中の死亡事故では、責任の所在を巡って議論が巻き起こった。

 市販に踏み切ったホンダは、個々の状況で判断されると説明しているが、何らかの基準が要る。

 政府は、安全確保と運転責任に関するルールの整備を、怠ってはならない。