避難者からの依頼で土の中の放射能濃度を測定する安斎さん(右)=2月22日、福島県三春町

避難者からの依頼で土の中の放射能濃度を測定する安斎さん(右)=2月22日、福島県三春町

福島での活動をまとめた冊子を前に10年を振り返る安斎育郎教授(京都市北区・立命館平和ミュージアム)

福島での活動をまとめた冊子を前に10年を振り返る安斎育郎教授(京都市北区・立命館平和ミュージアム)

 放射線防護学の専門家で立命館大国際平和ミュージアム名誉館長の安斎育郎さん(80)=京都府宇治市=は東京電力福島第1原発事故後、被災者の依頼に応じて福島県に通い、放射線の測定や被ばくリスクを減らす方法の助言を続けてきた。福島訪問は10年間で70回を超える。その原動力は「科学者として原発災害を防げなかった悔恨」という。3月11日には、非核のメッセージを込めた展示施設を同県楢葉町にオープンさせた。

 安斎さんは東京大工学部原子力工学科の1期生。原発技術者としての役割を期待されたが、安全性が確保されていないとして若い頃から原発政策を批判し、反対運動に取り組んできた。福島県は戦争中だった幼少期に疎開で過ごした「第二の古里」だ。

 東日本大震災と原発事故の発生から2カ月後、講演で福島市を訪れた。原発から約60キロ離れた保育園の園庭の放射線レベルを測定すると、京都の約100倍の値が出た。困惑する園長や保護者に対し、放射性物質を含む表土を削ることが除染になると伝えた上で、スコップで地表を3センチ削ったところ数値は3分の1に激減。「自分たちにもできることがある」と驚きの声が上がった。安斎さんは「不安を抱える人々と同じ目線で現場に立ち、リスクの極小化に努める責任がある」とボランティアで活動することを決めた。

 この10年間、立ち入りが制限される帰還困難区域を含めて測定の依頼は後を絶たず、個人宅や公共施設の放射線環境を調査。身近なものを使って放射線を遮る方法も紹介してきた。

 先月22日には、奈良県に自主避難中の女性の依頼に応じ、福島県郡山市の自宅と同県三春町にある畑を測定。防護の必要はなく、畑も深さ20センチまで丁寧に調べて汚染がないことを確認した。今後、数値を記載した報告書を渡し、帰還の判断材料にしてもらうという。

 3月11日に開設した展示施設は「ヒロシマナガサキビキニフクシマ伝言館」と名付けた。反原発運動で連携してきた早川篤雄さん(81)が住職を務める楢葉町の宝鏡寺境内に設けた。日本原水爆被害者団体協議会や東京都立第五福竜丸展示館、立命館大国際平和ミュージアムの協力も得て、原爆投下直後の広島と長崎の惨状や、核実験や原発事故の被害の実相が分かるパネルを展示する。

 安斎さんは「軍事利用であれ平和利用であれ、核エネルギーを安易に考えてはいけない。伝言館は、そのメッセージを未来世代に発信する拠点としたい。体力と依頼がある限り、福島に通い続けたい」と話す。