生田市長が経営する病院の駐車場に掲出された「新型コロナワクチン接種会場」の看板(2月20日、湖南市菩提寺)

生田市長が経営する病院の駐車場に掲出された「新型コロナワクチン接種会場」の看板(2月20日、湖南市菩提寺)

湖南市の生田邦夫市長(2020年10月撮影)

湖南市の生田邦夫市長(2020年10月撮影)

 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を巡り、滋賀県湖南市の生田邦夫市長が経営する病院で、市から正式発表がないにもかかわらず「接種会場」の看板が掲出され、市民から「立場利用では」「利益誘導だ」などの声が上がっている。市長は「接種スケジュールを間に合わさないといけない思いがあった」とするが、専門家は「利益誘導かの判断は難しいが、発表前であれば守秘義務違反の可能性がある」と指摘する。

 看板は「新型コロナワクチン接種会場」と記され、同市菩提寺の病院前駐車場に2月中旬から掲示されている。駐車場内には接種場のプレハブと待機場所のテントも設置された。

 関係者によると、同市の接種会場は市長が理事長を務める医療法人開設の医療機関2カ所が含まれる。一方、市は現在、接種会場を「医療機関6カ所と市施設の市民学習交流センター」と発表しており、個別会場の名称は公表していない。3月3日の市議会代表質問では市長自身が「今後ホームページや市広報で市民に伝える」と答弁した。

 市民からは「市では唯一とも言える大きな病院。速やかに接種する態勢をつくるのが大事」という評価の一方、ワクチン事業の委託料収入が数千万円にのぼる可能性があり、「利益誘導だ」「市の発表前から宣伝するのは立場利用では」など批判や疑問が出ており、「既に接種が始まっていると思った」との戸惑いの声も聞かれた。

 生田市長は京都新聞社の取材に「市民の安心安全のため速やかにワクチン接種を進めたい思いがあり、準備をするよう指示した。今回は非常事態であり地域貢献と考えている。利益誘導ということには十分気をつけている」と話した。

 同志社大の新川達郎教授(地方自治論)は「利益誘導や人気取りとも見える一方、ワクチン事業の病院負担は大きく、率先してワクチン接種を進めているとも言え一概に評価はできない。しかし、発表前の看板掲出はフライング。内部情報を知る者として守秘義務違反と言えるのではないか」としている。