沖縄県民が辺野古沿岸部埋め立てに明確に反対を示した民意も、それを尊重すべきだとする多くの声も、安倍晋三首相の眼中にはなさそうだ。

 沖縄県の玉城デニー知事はきのう、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る県民投票の結果を安倍首相と在日米大使館に通知した。

 首相との会談では、辺野古沿岸部の埋め立てに7割超が「反対」となった投票結果を示して移設断念を迫ったが、首相は「先送りできない」として工事続行の考えを改めて示した。投票結果を「真摯(しんし)に受け止める」といいながら全く聞く耳を持たないようでは、県民との溝は深まるしかないだろう。

 会談で玉城氏は、事態打開へ日米両政府と県が沖縄の米軍基地の整理縮小を改めて話し合う3者協議の場を設けるよう求めた。

 基地の整理縮小については、1995年に起きた米海兵隊員らによる少女暴行事件を受けて日米両政府が設置した「SACO(日米特別行動委員会)」の協議がある。96年の最終報告で普天間飛行場など11施設・区域の全部または一部返還が盛り込まれた。

 だが、多くは沖縄県内への移設・統合が前提だ。その現状や今回の県民投票で示された民意、国際情勢の変化などを踏まえ、新たに沖縄を加えた協議機関を設け、米軍基地の縮小のあり方を協議し直す必要があるという提案である。

 玉城氏がSACO最終報告を見直すよう求めたのに対し、首相は「推進する」と会談で述べたという。日米合意の見直しは簡単でないにしても、沖縄の未来に自分たちの声を反映させたい、という当たり前の思いを首相はもっと重く受け止めるべきではないか。

 いま必要なのは「辺野古が唯一の解決策」という思考停止状態から離れ、米軍基地問題を仕切り直すことである。そもそも辺野古がなぜ「唯一」なのか、日本政府はきちんと説明をしていない。

 日本政府は沖縄の民意を正面から受け止め、米側に3者協議を積極的に呼びかけるべきだ。外交・防衛は国の専権事項というが、沖縄に安全保障の過重な負担を押し付け続けることは、首相も本意ではないだろう。

 埋め立て予定地の軟弱地盤での作業は難航が予想され、5年とされてきた埋め立て期間を大幅に超過し、費用も膨大になる可能性がある。普天間飛行場の行方にも当然影響する。日米両政府は計画をごり押しするべきではない。