国民の理解を得られる内容とは言い難いのではないか。

 毎月勤労統計の不正を巡り、厚生労働省の特別監察委員会が再調査の追加報告書を公表した。担当職員による「虚偽説明」を認めながらも、あらためて組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)を否定した。

 最初の報告書を焼き直ししたような内容だ。厚労省幹部らの言い分の多くを追認しており、切り込み不足は否めない。

 わずか1週間でまとめた前回調査は関係者への聴き取りの約7割を身内の厚労省職員が行うなど中立性や拙速さへの批判を浴び、全面やり直しに追い込まれた。

 今回、外部弁護士による事務局を設けた。ただ監察委の委員長は引き続き厚労省所管の独立行政法人理事長が務め、同省研究会メンバーの学者ら2人も委員に名を連ねる。第三者性は依然乏しい。

 再調査では59人を聴取し、統計課担当トップらの不正関与や、少なくとも2件の虚偽説明を認定。不適切事案は「組織の独自判断や怠慢による」とした一方、綿密な打ち合わせや周到な準備の形跡はないとして担当者レベルや組織の隠蔽の意図を認めなかった。

 意図がないから隠蔽はないという理屈だが、これでは本人の主観次第で隠蔽がすべて否定されてしまう。事実に反すると知りながら、うその説明をするのは隠すことにならないのか。監査委の事実認定は甘く、矛盾があると言わざるを得ない。

 「首相官邸の関与」が焦点となっている昨年1月の調査方法変更については検証を見送った。その上、変更を「統計学的に十分な合理性が認められる」と明記した。方法変更後に賃金伸び率が高水準となり、「アベノミクス偽装」と批判する野党の見方を否定する形となった。

 報告書は公的統計の重要性に対する職員の認識の甘さや、幹部の統計に対する無関心、ガバナンス欠如を挙げ、厚労省を強く非難した。ならば徹底的に組織体質にメスを入れるべきではなかったか。

 不正の理由や背景、長年放置された経緯など核心はベールに包まれたままだ。国会での追及は参院へ移るが、与野党は引き続き真相究明に努める必要がある。

 監察委の委員長自ら「非常にグレーのところがある」と調査の甘さを認めた報告書である。信頼回復や再発防止のため、より強い権限を付与した独立性の高い第三者機関を新たに設置し、政府は徹底調査と検証に乗り出すべきだ。この報告書で幕引きは許されない。