全日本柔道連盟(全柔連)で前事務局長のパワーハラスメント疑惑が表面化した。公表せず、処分もせずにすませてきた山下泰裕会長ら幹部の対応に厳しい目が向けられている。

 山下氏は日本オリンピック委員会(JOC)の会長も務め、スポーツ界の健全な組織運営をリードしなければならない立場にある。

 透明性を欠くようでは、トップとしての適性が疑われることにもなる。責任の重さを自覚してもらいたい。

 パワハラ疑惑は、連盟事務局で昨春に発生した新型コロナウイルス集団感染の原因を調べる聞き取りの過程で発覚した。

 関係者によると、前事務局長が在職時、複数の職員に威圧的な言動を繰り返したり、業務時間外での仕事を強要したりしていたという。

 山下氏らは11月26日に連盟のコンプライアンス委員会から事実関係についての報告書の提出を受けたが、本人が12月2日から音信不通となり、今年1月に自己都合で退職したことなどから処分に踏み切らなかった。

 連絡がとれず当事者に弁明の機会を与えられなかった事情があるにしても、調査結果を理事会に報告せず、報告書が提出された事実さえ公表しないようでは隠蔽(いんぺい)したと受けとめられても仕方がない。

 全柔連では約8年前にも、日本代表の女子選手らに対するパワハラ問題や助成金不正受給などの不祥事が相次いだ。

 その反省の上に組織改革と再建に尽力してきた1人が山下氏だったはずだが、過去の教訓が生かされたとは言い難い。

 そもそも山下氏の閉鎖的な組織運営は全柔連に限らない。

 JOCでも理事会を非公開にしたほか、東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長の選出過程についても非公開にするよう強く進言した。

 非公開にこだわるのは、自由な議論を保証するためというが、密室でないとできない議論自体が問題ではないのか。全柔連もJOCも公益財団法人であり、透明性の確保が強く求められる組織だ。

 山下氏は、記者会見でJOC会長との兼務で問題に気付けなかったとし、辞意とも取れる発言をしていたが、今月に入って任期を全うする考えを示している。

 柔道界だけでなく、日本のスポーツ界の顔として山下氏の存在は大きい。だからこそ旧態依然とした意識のままでは困る。