日本中央競馬会(JRA)が、栗東市と茨城県美浦村のトレーニングセンターで働く調教助手や厩務(きゅうむ)員と騎手ら163人が新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金を不適切に受給していたとする調査結果を公表した。受給総額は約1億8700万円に上るという。

 給付金は、新型コロナの影響で収入が落ち込んだ経営者への支援策で、個人事業主には最大で100万円が支給される。厩舎関係者も要件を満たせば支給対象になる。

 だが、JRAが主催する中央競馬は緊急事態宣言中も無観客にするなどしてレースを続け、昨年の馬券の総売り上げは9年連続の増収だった。得られる賞金や手当の減額はなかったという。

 受給には、馬主で業界に顔が利く大阪市の税理士が指南役として深く関わっていた。受給者の多くは不適切だったとして返還を望んでいるが、なぜ制度の趣旨に反する受給が相次いだのか、JRAは調査をさらに進めて全容を解明し、再発防止に努めるべきだ。

 税理士は栗東に多くの顧客を抱え、昨年5月の申請受け付け開始直後から「原則全員が給付対象」「満額も可能」といった誘い文句の案内文を配っていた。受給者からは税理士に7~10%の成功報酬が支払われていたという。

 一方、美浦で確定申告を多数請け負っている別の税理士は、趣旨に合わないとして早い段階から申請しないよう呼び掛けていた。目的にそぐわない申請に歯止めをかけるどころか、「誰もが受け取れる」との認識を広めた大阪の税理士の責任は極めて重い。

 JRAの対応にも疑問が残る。昨年10月に労働組合から受給に関する情報提供を受けていながら、「風聞の域を出ない」として、今年2月に不正受給の疑惑が報じられるまで調査していなかった。

 調教助手らと直接の雇用関係はないとしているが、競馬界の問題として早く対処していれば、厩舎関係者が次々と不正受給に手を染める事態は防げたのではないか。法令や社会倫理に反する行為をうやむやにする組織体制では、信頼回復はなしえない。

 持続化給付金を巡っては、昨夏以降、全国で不正受給の摘発が相次いだ。受給要件にあいまいさがあったことは否めない。

 苦境にある人に速やかに支援を届けることは重要だが、不正の温床になるようでは今回のような不適切受給が繰り返されてしまう。制度の在り方について、政府も検証を進めるべきだ。