熊本地震発生後、避難所に集まった多くの被災者(2016年4月、熊本県西原村)

熊本地震発生後、避難所に集まった多くの被災者(2016年4月、熊本県西原村)

南海トラフ地震で京都と滋賀が受ける最悪の被害想定

南海トラフ地震で京都と滋賀が受ける最悪の被害想定

 未曽有の巨大災害とされる「南海トラフ地震」が起こると、最悪の場合、東海から九州にかけての太平洋側は大津波と震度7の揺れで壊滅的な被害が想定されている。救援や支援はこれら被災地に集中するため、京都や滋賀のような「被災地の外縁部」では自力で苦境を乗り切ることが求められる。その時、京都や滋賀の避難所はどのような事態になるのか。専門家や自治体への取材を基にシミュレーションした。

■直後から家を失った人が避難所に

 地震発生後、京滋では計8万棟以上の家屋が全壊・全焼すると想定される。家を失った多数の被災者が、学校や公的施設に開設される避難所に身を寄せる。地震発生1日後、京都府で19万人、滋賀県で4万5千人が避難者となる。

 南海トラフ地震は、被害が広域に及ぶため、食料や水、支援物資が京滋の避難所には届かない恐れがある。2016年の熊本地震では、被災範囲が県単位だったにもかかわらず、食料や水が大きく不足した避難所があった。

■1週間後、京都と滋賀で50万人が避難

 さらに、時間の経過とともに家庭の備蓄も尽きる。避難者数は地震発生1週間後に京都で34万人、滋賀で16万人に膨れ上がる。加えて、津波被害を受けた和歌山や三重などから、京滋に避難する被災者も増える可能性が高く、物資の欠乏は深刻化する。

 避難所では、密集しての雑魚寝を余儀なくされ、乳幼児のいる家族をはじめとする災害弱者への配慮などが課題になる。断水により、トイレなどの衛生環境は悪化する。ソーシャルディスタンス(社会的距離)を取れなくなり、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの流行リスクは高まる。持病のある人や高齢者を中心に、体調を大きく崩す人が増えてくる。

 避難所運営に詳しい京都大防災研究所の矢守克也教授は「『非常時は我慢しなければ』との考え方が長年あるが、見直すべきだ」と強調する一方、「多様な避難を支える制度づくりはまだ不十分」と指摘する。

■帰宅困難者や行き場ない観光客も多数に

 また、地震発生直後に京都府で29万~35万人、滋賀県では13万~15万人と想定される帰宅困難者が発生する。京都駅などターミナル駅周辺には、家に帰れず一夜を明かす人が大量に集まると考えられる。観光都市・京都では、国内外から訪れていた観光客への対応や、避難場所の確保も課題となる。