【資料写真】菅義偉首相(2021年3月7日、京都市左京区)

【資料写真】菅義偉首相(2021年3月7日、京都市左京区)

 昨年の秋、東京からJR常磐線を乗り継ぎ、真新しい駅舎に生まれ変わった双葉駅(福島県双葉町)で降りた。福島第1原発から約4キロ。改札内の線量計は毎時0・085マイクロシーベルトを示していた。

 駅周辺は、昨年3月の帰還困難区域における避難指示の一部解除に伴い、歩き回ることができた。

 人影はほとんど見当たらない。崩れかけたままのブロック塀、室内に散乱したままの幼児用の玩具…。荒れ果てた消防分団詰め所の時計は、2時46分を過ぎたところで止まっていた。

 駐車場に放置された車を見ていて、ある違和感に気づいた。みんな10年前によく走っていたタイプ。「型落ち」になった車両が、止まった時の長さを如実に物語っていた。

 11日、政府主催の東日本大震災10周年追悼式を会場で取材した。

 菅義偉首相の式辞の中でどうしても違和感を覚えるフレーズがあった。「復興の総仕上げ」。この言葉を2度、盛り込んでいた。

 首相は就任後、福島第1原発を視察し、双葉町にできた「東日本大震災・原子力災害伝承館」も訪れている。しかし本当の意味で足を止め、あの日を境に人々の暮らしに起きた現実を直視しているのだろうか。「総仕上げ」と口に出すことは、まだ早いように思う。

 追悼式典で、当時5歳の次男を亡くした福島県遺族代表の斎藤誠さん(50)=南相馬市出身=は訴えた。

 「原発は一度暴れると人間の手に負えなくなり、復旧に時間がかかり、ふるさとに戻れない人をつくり出すことを忘れないでほしいです」