手話をモチーフにした写真を撮る栗田さん(亀岡市安町)

手話をモチーフにした写真を撮る栗田さん(亀岡市安町)

 ■手話をモチーフに撮る写真家、栗田一歩さん(32)=京都府亀岡市三宅町

 JR京都駅近くの夜のスクランブル交差点で、雑踏の中、正面を見る金髪の女性。親指と小指を立てて伝えている言葉は「人々」。満開の桜を見上げた女性が手のひらを合わせて表しているのは「桜」-。どちらもモデルは聴覚に障害がある女性。透明感のある風景に人物が引き立つ構図で、つい見入ってしまう。

 4年前から手話をモチーフに写真を撮っている。高校卒業後、家業の写真店で、葬儀の場面を撮影するカメラマンとして働いてきた。「写真には興味がなく、休日にカメラを触ることもなかった」と振り返る。

 23歳の時、友人に手の美しさをほめられたのを機に、手話を学び始めた。気軽な気持ちからだったが、顔の表情や身ぶりで、感情を前面に出して表現する方法が「思いのほか、自分の性に合ってた」と話す。

 手話は、伝えた後に、相手が理解しているか目を合わせて確認するのがマナー。伝わっていなければ、相手に合わせて表現法を変える。言い放しや聞き流しは存在せず、丁寧な言語であることも魅力に感じた。

 3年が過ぎ、手話通訳者の勉強を始めたころ、「福祉の枠を超えて知ってもらうことはできないか」と考えた。折から、手話の動作の美しさに心が動かされる瞬間が何度もあった。その一瞬を伝えられたら-。手元には、カメラがあった。

 一から勉強し、表現法を追究した。個展を開き、一般のコンテストにも応募。京都駅前の写真はニコンイメージングジャパンが主催するコンテストで若手の特選賞を得た。

 仕事の道具にすぎなかったカメラは今ではかけがえのない相棒になった。「手話に関心がない人に、もっと知りたいと思うきっかけになる作品を撮っていきたい」と言葉に力を込めた。