東日本大震災で亡くなった人の半数以上が高齢者だった。障害のある人の死亡率も高かった。

 大震災の教訓として、こうした「災害弱者」の避難のあり方が問われ、対策が求められた。しかし、その後も多くの高齢者が災害の犠牲となり、2018年西日本豪雨や昨年の7月豪雨などで死者・行方不明者の6~8割を占める。

 先週、政府は災害対策基本法の改正案を閣議決定し、高齢者ら災害弱者に向けた新たな避難対策を打ち出した。

 どう実効性を確保するのか。改正案は今国会に提出されている。現状の課題を踏まえ議論してもらいたい。

 改正案は、高齢者に限らず、多くの住民にとっても分かりにくいと指摘される避難勧告と避難指示について、その区別をなくし、避難指示に一本化する。

 風水害などの恐れがある際に、落ち着いて避難できるよう時間的余裕を持って出す勧告の狙いが浸透せず、逃げ遅れが後を絶たないからだ。今の勧告のタイミングで避難指示を出し、災害の恐れが高い警戒レベル4までに危険な場所から全員避難となるようにした。

 高齢者ら災害弱者には、それより低いレベル3で「高齢者等避難」を発令する。ただ、自力避難が困難な人が少なくない。一人一人の避難方法を事前に決めておく「個別計画」が有効なことから、「個別避難計画」に名称を変更し、市区町村に作成の努力義務を課して、普及を図ることにした。

 しかし、職員が少ない自治体では重い負担になりそうだ。大震災を受け、政府は避難行動要支援者名簿の作成を自治体に求め、ほぼ100%達成したが、個別計画の作成にまで至ったのは12%にすぎない。

 一方で、自治体任せにしない動きが出ている。大分県別府市では、本人と担当の福祉専門職、地域の自治会が、車いすでの移動や避難所での場所確保などを協議して個別計画を作成し、避難訓練で確認している。

 兵庫県では、福祉専門職向けの防災研修を実施しており、災害時ケアプランの作成に自治体から報酬が出るという。

 こうした取り組みが広がるよう、政府は施策面や財政面でサポートしてもらいたい。自治体に努力義務を課すのであれば、防災担当職員の配置などへの支援策も同時に示す必要がある。

 避難情報をどう伝え、実際の避難行動につなげるのか。大震災から10年たっても課題だ。