夫婦が同姓でも別姓でも希望に応じて選べるようにする選択的夫婦別姓制度について、国会の議論が進まない。

 法制審議会が制度の導入を盛り込んだ民法改正案を法相に答申して今年で四半世紀になるがいまだに法案提出に至っていない。

 昨年末に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画も、伝統的な家族観を重んじる自民党保守層の反対で「選択的夫婦別姓」の文言が直前に削除され、一時高まっていた導入への機運がしぼんだままだ。

 気がかりなのは、導入に反対するため、地方議会の自由な議論を抑え込むような動きまで出てきたことである。

 自民党の国会議員有志50人が連名で反対を呼びかける文書を42道府県の議会議長宛てに1月30日付で送っていた。

 家族単位の社会制度崩壊を招くといった理由で選択的夫婦別姓に反対し、導入に賛同する意見書を採択しないよう求める内容だ。

 送付先はいずれも自民党籍を持つ議長だが、地方議会が意見書を出すかどうかにまで国会議員が口をはさむのは明らかに行き過ぎだ。地方議会の意思決定への不当な介入と言われても仕方のない動きである。

 選択的夫婦別姓の実現を求める意見書の提出に向けて調整していた埼玉県議会の議長は「受け取った地方議員によっては圧力を感じたと思う」と共同通信の取材に答えている。

 議員有志に男女共同参画担当相に就任する前の丸川珠代氏が名を連ねていたことも波紋を広げた。男女共同参画担当相はジェンダー平等の旗振り役の立場にあるからだ。

 3日の参院予算委員会で丸川氏は、夫婦別姓制度に反対意見を持っていることを認めながらも「大臣として反対したことはない」とし、議論に向けた環境整備を進めていく考えを強調した。

 だが、男女共同参画推進のために制度実現が必要と訴える市民からは「議論が止まるのでは」と懸念の声が上がっている。

 民法では、結婚した男女はいずれかの姓に統一することになっているが、現実には96%が夫の姓を選んでいる。

 通称使用の範囲は広がってきても、多くの女性が二つの姓を使い分けなければならない不平等な現実に変わりはない。

 国連の女性差別撤廃委員会は、民法の規定が差別規定に当たるとして日本政府に改正を繰り返し勧告してきた。

 最高裁も、2015年に夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とする初判断を示した一方、選択的夫婦別姓については「国会で論じられるべき」との意見を付け、議論を促した。

 そうした求めを長年放置してきた国会の責任は大きい。とりわけ議論封じのような自民党内の動きは、民主主義のルールまで阻害するものといえ、受け入れられない。

 世論調査でも別姓容認は多数を占めている。夫婦同姓を義務とする国は日本だけである。

 多様な家族と生き方を認め合う社会に向け、議論の活性化こそ求めたい。