小説家村田沙耶香さんの芥川賞受賞作「コンビニ人間」は、コンビニしか社会との接点がない女性店員を描いている。

 子どもの頃から「普通」でなく、社会に適応していないと思っていた主人公が、新規オープンの店にアルバイトとして採用された。マニュアル通りに動き、「初めて、世界の部品になることができた」と感じる。開店時に訪れた客に対し、繰り返した言葉は「24時間営業でオープンしております」だった。

 作者自身が長年、コンビニで働いていることもあって、コンビニのありようの核心を突くシーンである。

 日本フランチャイズチェーン協会が1月に発表した主要コンビニの全店売上高は、11兆円に迫る。店舗数は、5万5千余りになった。日本人にとって、もはやコンビニのない生活は考えられない。

 これだけの隆盛をもたらした原動力の一つが、24時間営業であるのは間違いない。

 ところが、大阪府東大阪市にあるコンビニのセブン―イレブン加盟店が先月、人手不足を理由に24時間営業をやめてしまった。セブン―イレブン・ジャパン本部から、フランチャイズ(FC)契約の解除と違約金約1700万円の支払いを求められ、対立している。

 業界に、転機が訪れたのではないか。

 セブン―イレブン・ジャパンによると、駅や病院など施設内の店舗以外は原則として24時間営業を行う。FC契約にも明記されている。

 売り上げがピークとなる時間帯に商品をそろえるには、深夜の作業が必要で、常に開店していることが地域住民の安心感につながっている、とする。

 災害時の被災者支援に協力する協定を、自治体などと結んでいる店舗もあり、地域のインフラとも位置づけられる。それ故、原則は譲れないとする。

 一方、24時間営業をやめた店舗のオーナーは、アルバイトが集まらないので、この8カ月間に休みが3日しか取れていない。「事情に応じて、営業時間を選択できるようにしてほしい」と訴えている。

 この店舗だけでなく、24時間営業が重荷となって、オーナーが疲弊しているところは、ほかにもあるはずだ。

 人手不足が原因なのだから、業界全体の課題ともいえる。

 地域のインフラとしての役目も、営業を継続できる態勢が整わないと果たせない。

 セブン―イレブン・ジャパンが、24時間営業の見直しに向けて、今月中旬から時間短縮営業の実験を始めることになったのも、当然の流れだろう。

 直営店の多い外食産業では、すでに取り組みが進んでいる。コンビニ業界も、FCの系列にこだわらず、持ち回りで営業するなど、工夫をしてみてはどうか。

 「コンビニ人間」で村田さんは、「普通」ではないとされる主人公の目を通して、異物を排除してしまいがちな現代社会の状況も、あぶりだしている。

 コンビニの「普通」は24時間営業かもしれないが、この考え方が今後も通るとは限らない。