きょう3日は、3万8千人がエントリーした東京マラソンのレース当日。先月17日に行われた京都マラソンでもランナー1万6千人の表情は、力いっぱい生きているという充足感で輝いて見えた▼走る人が増えた。30年ほど前、鴨川沿いを走っていて「わざわざしんどい思いをせんでも」と言われたが、今では早朝から日没までそこでランナーを見ない日はない▼転機は2007年に始まった東京マラソンだろう。ニューヨークシティー・マラソンにならい、銀座など目抜き通りを一般人が走り、走らない人は街角で応援を楽しむ。制限時間7時間とハードルを下げ、多くの人にやってみようと思わせた功績は大きい▼「お金ではなく、身体を使ってハッピーになる」という感覚を知った大衆の足取りは力強い。国民が運動して健康になれば医療費が減る―政府のそんな思惑には目もくれず、軽やかに駆けていく▼レースの成功は、東京五輪への理解を広め、招致を実らせる原動力の一つとなった。一方で、五輪関連費用が開催都市財政の足腰を弱らせかねないというのは皮肉だ▼ようやく漂い始めた沈丁花(じんちょうげ)の香りに心が動いたら、軽くスキップしてみよう。息が弾んで鼓動はドキドキするが、すがすがしい。体で春を感じる喜びもまた、スポーツは教えてくれる。