長野県の北アルプス・乗鞍岳で雪崩が発生、5人が巻き込まれ、滋賀県の男性1人が亡くなった。同じ滋賀の登山仲間2人も軽いけがを負った。

 「『雪崩だ』という声で気づいたが、あっという間に巻き込まれた」と登山仲間は話している。

 雪山のリスクを承知していたとしても、突然、雪崩が猛スピードで襲いかかってくる。改めて自然に向き合う難しさを思い知る。

 現場一帯は前日にまとまった雪が降っており、雪崩注意報が出ていた。古い積雪の上に積もった新雪が滑り落ちる「表層雪崩」が起きたとみられる。

 同じ日には中央アルプスでも数人が巻き込まれる雪崩が起きている。長野県警が「雪崩を100%回避することはできない」と注意を促していることを、胸に刻んでおく必要があろう。

 厳冬期を越し、天候が比較的安定してくる3月以降、登山者は多くなる。しかし3月でも雪が積もり、雪崩の発生シーズン中であることを忘れてはなるまい。

 国土交通省の資料をみると、集落での雪崩は2月が最も多いが、3月でもたびたび起きている。集落を離れた険しい山地では、それ以上に発生しているはずだ。

 山岳事故の中で雪崩による遭難者は、2019年までの5年間で計104人を数える。

 それでも登山者は増えている。山に入るなら、十分な準備を怠ってはいけない。雪崩に遭遇しないよう、前日までの降雪や気温上昇を調べた上で、危険な場所は避け、登山を中止することも考えておくべきだ。

 さらに、NPO「日本雪崩ネットワーク」の指摘が重要だ。雪崩情報は発表山域の全体傾向を示すだけで、個別の地形や気象変化は多様であり、現場での的確な観察や判断が欠かせないという。

 積雪の状況は、気象の急変に影響されやすく、登山者は風や降雪に注意を払い、気温を測ることを習慣にする。地形でも、小さな雪崩で最悪の事態をもたらす「地形のわな」があるといい、潜在的な危険度を見極める必要があると指摘する。

 自然に親しむ登山だが、万一に備えることも考えるべきだ。遭難した際に場所を知らせる発信器「ビーコン」や、雪の下の仲間を探すための棒「プローブ」、シャベルを携帯しておきたい。

 「山には管理されていない危険がある」とは日本雪崩ネットの指摘だ。忘れてはなるまい。