地元産の練り物などを使ったおでん。串揚げや刺し身も提供する

地元産の練り物などを使ったおでん。串揚げや刺し身も提供する

鶏ガラベースのだし汁を継ぎ足す小島さん(舞鶴市浜・㐂文)

鶏ガラベースのだし汁を継ぎ足す小島さん(舞鶴市浜・㐂文)

 鶏がらベースのだし汁で煮た地元産の練り物や野菜が、口の中でふわりととろけた。㐂文(京都府舞鶴市浜)3代目の小島美佐子さん(73)が仕込んだ名物のおでんを味わいに、子ども連れから酔客まで幅広い人が訪れる。


 メニューは、刺し身やフライ、ご飯物と幅広い。年中提供するおでんは、かまぼこやちくわ、平天など練り物の種類が豊富で、トマトや皮ごとのタマネギといった“変わり種”の具も。数日間かけて取り、継ぎ足していくだし汁は「酒に合うよう辛くなく、しっかり味もつけている」とのこだわりが詰まる。半世紀以上通う木村浩司さん(78)=同市溝尻=は「家庭でもコンビニでも出ない味」と笑顔を見せる。


 1959年4月、小島さんの義母の幸乃さんが開店。当時、夜遅くまで営業する居酒屋は珍しく、高度経済成長を支える働き手でにぎわったという。70年代に夫の勲さんと店を引き継いだ。2004年、厨房(ちゅうぼう)を守ってきた勲さんが亡くなり、接客担当の小島さんが引き継いだが、おでんのだし汁はレシピもなく手探りで、夫の味に近づくよう心掛けてきた。


 足しげく通うファンは多い。新型コロナウイルスの緊急事態宣言で長期休業した際は「いつまで休んどるん」と気に掛ける電話が鳴った。時短営業時には「遅い時間に来る常連さんが、早くから来てくれた」と小島さんは顔をほころばせる。


 茶道教室も開いていた勲さんは、薄口で繊細な味加減が得意だった。「お父さんの優しい味付けが好きで、それを守っとるだけ」と小島さん。変わらない味が、今日も来店者を温かく迎える。
 

 㐂文 京都府舞鶴市浜1179―1。日曜定休。午後5時半~同11時。0773(62)1958。刺し身など一部商品は予約が必要。