未曽有の原子力災害を起こした反省のなさに憤りを覚える。

 東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)で、ずさんな核物質管理が明らかになった。

 テロ目的などの不正な侵入を見張る防護設備で、昨年3月以降、検知機能が一部喪失した状態を放置していた。

 原子力規制委員会が、先月下旬に行った検査で判明した。安全重要度と深刻度ともに、過去に例のない「最悪レベル」との暫定評価で指弾したことが、その重大性を表している。

 規制委が、東電の目指す同原発の運転への手続きを当面保留し、その前提である保安規定の了承も見直すことを視野に入れるとしたのは当然だ。

 再稼働どころか、廃炉作業中の福島第1原発を含め、東電が各原発に現存する大量の核物質を扱う資格があるのかすら疑わざるをえない。

 東電によると、侵入検知設備が計15カ所で故障し、規制委はうち10カ所の代替措置が不十分だと指摘した。18年から複数故障して復旧に手間取り、担当社員も代替措置に実効性がないと認識しながら改善していなかったとみられる。

 同原発では、所員が昨年9月に同僚のIDカードを使って中央制御室に不正に入室していた問題も発覚。安全対策工事の未完了も相次ぎ露見している。規制委が指摘した「組織的な管理機能の低下」を東電は重く受け止めるべきだ。

 原発などが保管する放射性物質を強奪して悪用したり、攻撃したりする「核テロ」への対策は世界的にも重要性を増している。

 20年前の米中枢同時テロを踏まえ、日本の規制委は、攻撃を受けても原子炉の冷却を続け、放射性物質の放出を抑える対処施設の設置を義務付けた。各原発で巨額のハード整備を進めているが、肝心の安全思想と管理態勢が伴っていない現実を露呈したといえよう。

 規制委は、東電に対し半年以内に第三者による原因分析をし、報告するよう求める。徹底的な究明と再発防止策なしに国民の不信は拭えない。

 問題は東電にとどまらない。原子力規制庁はID不正使用を昨年9月に把握していたのに、今年1月まで規制委に報告していなかった。不正の3日後、規制委は保安規定を了承しており、その正当性が揺らいでいる。

 福島事故10年で規制委の更田豊志委員長が訓示したように、新規制基準の審査に合格さえすればという「新たな安全神話」を厳しく戒めていかねばらならない。