28年間続いた講義に対して京都工芸繊維大から感謝状を贈られる尾関さん(京都市北区・大仙院)

28年間続いた講義に対して京都工芸繊維大から感謝状を贈られる尾関さん(京都市北区・大仙院)

 理工学系の学生にこそ禅の教えに触れてほしいと考え、28年間にわたって京都工芸繊維大の教壇に立ってきた大徳寺塔頭・大仙院の尾関宗園前住職(88)が、今月末で同大学の非常勤講師を退任する。新型コロナウイルスの影響で対面での講義が難しくなったことが主な理由といい、大学から感謝状が贈られた。

 尾関さんは、大学の教養科目の一つとして「生活文化史」(現・京の生活文化史)の授業が始まった1993年度に非常勤講師に着任。教室に法語を書いた軸を掛け、法衣姿で週1度の講義に臨んできた。「逆境を乗り切る夫婦の心得」「自らに勝つものは強し」といったユニークなテーマや軽妙な語り口、希望者を対象にした座禅などが人気で、28年間に受講した学生は約1万9千人に上るという。

 だが新型コロナの影響で対面形式の授業が難しくなった2020年度、講義は1度だけ動画配信をしただけで、それ以外はプリントを読んで感想文を提出する形で行われた。「学生の食い入るようなまなざしを受けながら、私も真剣に話をするのが楽しかった」と語る尾関さん。21年度以降も数百人の学生を集めた大規模な講義は難しく、また高齢になってきたこともあって20年度限りでの退任を決めた。

 大学では、尾関さんの授業は理工学系の専門分野を学ぶ学生が視野を広げる得がたい時間であったとして、感謝状の贈呈を決定。今月5日に前田耕治副学長らが大仙院を訪れて「学生にも大人気の講座だった。終了は寂しいが、長年ありがとうございました」と感謝の言葉を掛けた。

 尾関さんは「専門道場の頃の話や自分の失敗談など、学生さんが真剣に聞いてくれる話を考えながらの講義は本当に楽しかった。私の方こそ感謝したい」と28年間を振り返った。