安田さんが制作に携わった駄菓子屋のドールハウス作品。扉や窓も開閉する(京都市右京区常磐)

安田さんが制作に携わった駄菓子屋のドールハウス作品。扉や窓も開閉する(京都市右京区常磐)

手のひらに乗ったちゃぶ台や牛乳箱の模型。安田さんがベニヤ板や樹脂を削るなどして自作した

手のひらに乗ったちゃぶ台や牛乳箱の模型。安田さんがベニヤ板や樹脂を削るなどして自作した

 木造2階建ての駄菓子屋「朝日商店」。牛乳瓶やブラウン管テレビがほの暗い照明に照らされた店内。赤電話やさびた看板は、レトロ感にあふれる。ただし店には入れない。建物は高さ約40センチ。菓子の箱は爪よりも小さく、実物の12分の1ほど。ドールハウス作家 安田隆志さん(61)=京都市右京区=は、作品の横で「目をこらしてずっと眺める人もいるんです」とほほ笑む。

 兵庫県西宮市出身。35歳の時に観光で訪れた京都市中心部の店で展示されていたドールハウスの洋館を見かけた。当時は実家の工務店で働いていた。「違った形で家を作る作業に魅力を感じた。自分でも作ってみたくなった」。独学で学びながら、西宮市の女性作家をパートナーに、創作を続けた。2018年春、退職を機に京都市右京区常盤に移り住んだ。

 担当するのは、主に建物や内装。部材の多くは手作りだ。半分に割った割り箸は色を塗って瓦屋根の一部に、固めた樹脂は一升瓶の形に削り出す。工務店勤務の経験もいかして、建物を作る前には図面を引く。柱や梁(はり)の位置に問題がないかを確認し、屋根裏など見えない部分にまで気を配る。

 これまで手掛けたのは、煎餅屋や書店など約15点。内部のパーツはそれぞれ、200点を超える。作品の多くは1970年代の建物がテーマ。自身は中学生で、大阪万博を経験した時期だ。「楽しい思い出が残る時代。それをミニチュアで表現したい」

 作品は毎年、全国の百貨店や書店で展示してきた。間近で眺める来場者の笑顔が、何よりの楽しみだ。

 現在は、映画館を題材にした作品づくりを進める。右京区にある太秦地域は、昭和期に多くの撮影所があった場所。引っ越しを機に制作への思いを強くした。作業机の横には、コーラ瓶の小さな模型や映写機などが並ぶ。「地元の方々に喜んでもらえる作品になるはず」