「イチゴだよー」。筋電義手を着けた右手で折り紙を掲げる石川美穂ちゃん(守山市内)

「イチゴだよー」。筋電義手を着けた右手で折り紙を掲げる石川美穂ちゃん(守山市内)

微量の筋電位を測定できるモニター。まだ言葉が話せない乳幼児の訓練に役立っている

微量の筋電位を測定できるモニター。まだ言葉が話せない乳幼児の訓練に役立っている

 手が生まれつきなかったり、事故や病気で失ったりした人が使う人工の手「筋電義手」。特に子どもは、日常的に装着することで脳の発達やバランスの良い成長が期待できるという。約150万円と高額なドイツ製品が主流だが、より安価な「国産」の筋電義手が登場する見通しとなり、普及に光が差している。

■筋肉の電気信号で「握る」「開く」

 滋賀県守山市立入町の石川美穂ちゃん(4)は生まれつき右手の肘から先がない。母真希さん(37)は、外見を整える装飾義手などの他に、より高機能な筋電義手があると知り、兵庫県立リハビリテーション中央病院(神戸市西区)に娘と通っている。「はさみで紙を切るにしても、片手で紙を持って回すことで繊細な動きができる。跳び箱、リコーダー、縄跳びは、両手じゃないと難しい。集団生活の『できない』を減らして、自信をつけられたら」と願う。
 筋電義手は、人の腕との接続部にあるセンサーで筋肉に生じる電気信号(筋電)を感知して指を動かす仕組み。1歳から練習を始めた美穂ちゃんは、右腕の筋電義手でスティックのりをつかんだり、折り紙をそっとつまんだりと、「握る」「開く」を自然にこなす。
 「早くから着けていると体の一部になる。筋電義手の方の手で鼻をかく人もいるくらいです」。同病院の戸田光紀医師は先天性欠損の場合、1歳前後からの装着を勧める。
 ただ、欧米では1970年代から普及し始めたのに対し、日本では症例が少ないこともあって開発が進んでこなかった。同病院に隣接する兵庫県立福祉のまちづくり研究所では、金属製のドイツ製品とは違いプラスチックで手先の部分を作り、国の補助金を活用して開発費を抑え、価格は従来の3分の2以下を目指す。現在5人の被験者が試用中で、国産として昨年初めて国基準をクリアした他の研究機関の製品に続こうとしている。
 課題は、装着を望む人に購入費の公的助成があるものの、筋電義手を「使いこなせる」ことが条件で、そのための訓練用義手は自己負担という点だ。加えて、子どもが本格的な訓練を受けられる施設は西日本には同病院しかない。毎年6人前後が新規で来院するが、九州から通っている子どももいるといい、石川さん親子も月2回、電車で約2時間かけて通院する。
 同病院は2014年に「小児筋電義手バンク」を創設し、不要になった義手や寄付金で購入した義手を、必要な子どもに無料で貸し出している。貸与者は延べ74人に上り、美穂ちゃんも利用する。また、言葉のやりとりができない乳幼児の筋電を可視化するモニターを開発し、遊びの中で学ぶ訓練マニュアルの出版も計画している。
 同研究所ロボットリハビリセンターの陳隆明センター長は「国産で価格を抑えることができれば、市町村単位で訓練用の筋電義手を置くという選択肢もでてくる。普及の道筋をつけたい」と展望している。