「床上1メートル」で被災者を分けてよいのだろうか。

 台風19号による住宅被害は現在までに約6万8千棟に上る。うち浸水が比較的浅い「床上浸水」以下に区分される被害が全体の9割を超えていることが分かった。

 最大300万円が支給される被災者生活再建支援法の対象にならないケースが多数に上るとみられる。住宅の復旧など被災者の生活立て直しが滞る恐れがある。

 同法の基準が被災の実態を反映しているかどうか、しっかりと見直す必要があろう。

 同法の対象は「全壊」「大規模半壊」に限られ、「半壊」以下の認定だと支援金を得られない。

 内閣府によると、床上1・8メートル以上の浸水は「全壊」、1メートル以上1・8メートル未満は「大規模半壊」と判定される。一方、1メートル未満は「半壊」、床下浸水は「一部損壊」とされることが多いという。

 床上浸水は数センチであっても復旧には多大な労力が要る。だが現行制度では、90センチもの浸水でも対象から外されてしまう。

 支援には一定の線引きが必要だとしても、「1メートル」が何を根拠としているのかは分かりにくい。被災者が納得できる説明が必要だ。

 2015年の関東・東北豪雨では、浸水が1メートル未満だった茨城県常総市の住宅の多くが再建に700万~1千万円かかり、老後の蓄えを取り崩した人もいたという。

 水害による建物被害の程度は、水が引くと外見的には分かりにくく、地震被害の場合より軽くみられる傾向があるという。

 浸水の程度だけでなく、失われた生活機能にも着目して被害をとらえ直し、個々の実情をふまえた支援につなげる必要があろう。

 全国知事会は昨秋、支給対象を「半壊」にまで拡大することなどを求める提言をまとめた。だが、国が動かないまま、強大な台風などの被災者が増え続けている。

 過去の水害では、独自の支援制度を設けて被災世帯を救済する自治体もあった。

 京都府は昨年7月の西日本豪雨で被害を受けた11市町の被災者を支援、滋賀県も同6月の竜巻被害で米原市の被災世帯に適用した。

 しかし、自治体の制度は国の仕組みとは別建てだ。まずは、ベースとなる支援法の制度を拡充する検討がなされるべきではないか。

 台風19号の被害に関し、内閣府は1メートル未満の浸水と扱われても2次調査で被害区分が変わる可能性があるとしている。被災実態をよく見極める調査としてほしい。