無罪判決によって速やかに名誉回復を図らねばなるまい。

 東近江市の湖東記念病院で、人工呼吸器を外し患者を殺害したとして、殺人罪で懲役12年が確定、服役した元看護助手西山美香さん(39)の再審公判に向け、大津地検が新証拠による立証をしない方針を示したことが明らかになった。

 検察側が「事実上の白旗を上げた」(井戸謙一弁護団長)形だ。15年に及ぶ西山さんの「冤罪(えんざい)」が晴れるのは確実とみられるが、唐突に有罪主張を撤回した検察の姿勢は批判を免れない。

 事件は2003年に起きた。西山さんは翌年、滋賀県警の聴取に殺害を認める供述をし、逮捕、起訴された。公判で否認したものの、大津地裁が05年に有罪判決を下し、最高裁で確定した。西山さんが服役後、無実を訴えた第2次再審請求審で、大阪高裁は新証拠を基に自然死の可能性などを指摘し、再審開始を決定していた。

 大津地裁は近く無罪判決を下すだろう。西山さんは「無罪判決を早くもらいたい」と笑顔を見せたが、失われた時間はあまりにも長い。虚偽自白に頼った県警と大津地検、それを見抜けなかった裁判所の責任は重いはずだ。

 検察は当初、再審公判でも全面的に有罪を主張する方針だった。だが「有罪立証のための新たな立証はせず、裁判所に適切な判断を求める」(高橋和人・大津地検次席検事)として方針変更。理由は一切明らかにしない。これでは無責任ではないか。

 さらに事実上の敗北宣言にもかかわらず、求刑放棄や無罪論告などで自ら無罪を認める姿勢は示さないようだ。メンツにこだわる検察に弁護団などから批判の声が上がるのは当然だろう。

 再審請求審で特別抗告が棄却された時点で、検察側の主張は否定された。検察は早期に有罪立証を断念すべきで、再審開始までに時間を要した責任は避けられない。検察側が再審決定に不服申し立てできる現行制度に問題があり、改善が必要だ。

 弁護団は再審を1回で結審させることを求め、自白を誘導したとされる刑事への証人尋問を見送ったが、捜査段階の供述調書などの証拠開示を求めた。捜査の違法性を検証するためだ。

 一刻も早い無罪確定を最優先すべきとはいえ、真相解明も欠かせない。刑事訴訟法改正などで証拠開示は改善されているものの、再審請求審では進んでいない。過ちを繰り返さないためにも検察は開示請求に協力する必要がある。