めぐる命、清雅に

 花咲く木々、群れ遊ぶ小鳥、澄んだ水に泳ぐ魚。命のきらめきは朝は見る人の心を躍らせ、夕方には優しく慰めてくれる。日本を含め東洋では昔から、花、鳥、四季を題材とした絵画が愛好されてきた。住友コレクションの花鳥画の名品を、近世日本、明清期の中国を中心に約30点で紹介する。

伊藤若冲「海棠目白図」 江戸時代 18世紀

 日本の花鳥画は、時代とともに中国から技法や思想を取り入れて発展し、江戸期に大きく花開いた。伝統の狩野派、華麗な琳派、趣深い文人画、写生が新鮮な円山四条派。中国の影響を受けつつ、日本ならではの清雅で柔らかな空気が画面に薫る。

椿椿山「玉堂富貴・遊蝶・藻魚図」 江戸・天保11(1840)年

 例えば椿椿山(つばきちんざん)の三幅対。花かごからこぼれる海棠(どう)、春蘭(らん)、藤などの花々は、本来は咲く時期が少しずつ違うのだが、優しい色で互いに調和し、一体で春を演出する。さらに絵の枠を超えて香りは左幅のチョウを呼び寄せ、花びらは右幅の魚に散る。三つの絵から、春の喜びがさざ波のように高まってくる。

沈南蘋「雪中遊兎図」 清・乾隆2(1737)年

 中国の沈南蘋(しんなんぴん)は鎖国時代の長崎に滞在した。写実的で生命力に満ちた画風は日本の画家たちに衝撃を与えた。今回展示の「雪中遊兔図」はその最大級の作品で、四方に枝を張る梅の巨木、大地で鼻をうごめかすウサギたちなど、天地を突き破ってあふれ出すような大陸の春が感じられる。

 作品は日本、中国と分けずに展示される。国や流派を問わず、自然の躍動に画家たちが受けた感動とその発露を感じ取りたい。

沈恢「雪中花鳥図」 明時代

【会期】10月26日(土)~12月8日(日) 月曜休館(11月4日は開館、5日は休館)
【会場】泉屋博古館(京都市左京区鹿ケ谷下宮ノ前町24)
【開館時間】午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
【主催】泉屋博古館、京都新聞、日本経済新聞社
【入館料】一般800円、高大生600円、中学生以下無料 ※20人以上は団体割引20%、障害者手帳提示で無料
【関連イベント】◇美術史学会共催シンポジウム「往還する東アジアの花鳥画」11月2日午後1時~同4時、パネリストは京都市立芸術大・竹浪遠氏、文化庁・綿田稔氏、京都工芸繊維大・井戸美里氏、泉屋博古館・実方葉子氏。座談会の司会は京都大・筒井忠仁氏
会場は館内の講堂、一般参加は定員20人、当日午前10時から整理券配布
◇列品解説 11月10、23日午後2時から学芸員が展示室で実施
【問い合わせ】泉屋博古館075(771)6411