不安そうな車椅子のお年寄りの表情が気にかかった。丹波地域にある総合病院の待合所。ようやく名前を呼ばれたのに付き添いの姿がなく、困惑していた▼ほどなく孫くらいの若者が現れて一緒に診察室に入ったが、出るとまた離れる。身勝手なと怒っていたら、別のお年寄りの手を引いていた。胸の名札から老人ホームの職員のようで、実に3人の通院の付き添いを掛け持ちしていた▼複雑な思いになったのは、同じように郷里の母を任せているからもある。施設の職員は優しいが、いつも忙しくして「ゆっくり話せるのは風呂の世話をしてもらう時くらい」と聞かされる▼介護現場の人手不足の一端を目にして身につまされる。昨今は多くの業界の人材難もあり、労働の重さや待遇面から職員が集まらず、空きはあるのに利用者を受け入れられない施設の話も耳にする▼この先、さらに介護サービスを必要とする人は増え続ける。団塊の世代全員が75歳以上となる2025年には、全国で約34万人の担い手が足りなくなるという▼国は、職員の処遇向上や、配膳、入浴準備など補助的な仕事をする介護助手の養成に加え、外国人労働者の受け入れ拡大で補いたいとするが、現状を考えれば相当な覚悟で臨む必要があろう。現役世代を含めわが身のことでもある。