村田さんが伊吹山麓で再発見したイチョウシダモドキ(本人提供)

村田さんが伊吹山麓で再発見したイチョウシダモドキ(本人提供)

 「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎(1862~1957年)が31年に伊吹山で採集した標本に含まれ、以後発見例がなかったシダを、大津市のアマチュア植物研究者村田章さん(65)が昨年、89年ぶりに伊吹山麓で再発見した。再発見の日は偶然にも、そのシダを「イチョウシダモドキ」と名付けた別の研究者の没後1年の命日で、村田さんは「運命的」と驚いている。

 村田さんは小学生のころから虫や植物など自然が好きで、中学時代にとりわけシダに関心を持った。以後、高校教員の傍ら研究してきた。珍しい品種「イチョウシダ」を見ようと、昨年2月17日、伊吹山麓の自生地(米原市)を訪れ、他のシダより葉が細かく、胞子嚢(のう)の形状も違う1株を見つけた。

 当時、村田さんはイチョウシダモドキのことを知らなかったが、特別な株だとすぐに気付いたという。標本として茎と葉を採集し、自身が所属する愛好者団体「日本シダの会」の他の会員らに調べてもらった。

 その結果、神奈川県の在野のシダ研究者・故山本明さんが約20年前に、イチョウシダと分類された牧野の標本の中から見つけ、同会の会報で発表したイチョウシダモドキと特定された。山本さんはモドキについて、イチョウシダとコバノヒノキシダの雑種と推定したが、牧野の標本以外に報告例がないため研究が進まず、2019年2月17日に88歳で亡くなった。

 同会は昨年10月、村田さんの標本を国立科学博物館(東京都)に提供した。イチョウシダ自体が生育地の減少や園芸用の乱獲で減り、環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されており、村田さんは「まず見つからない貴重な種。山本さんの命日だったことも不思議な縁を感じた」と話し、より詳細な研究が始まるきっかけとなることを期待する。