東京五輪・パラリンピックで海外からの一般観客受け入れを断念することが正式に決まった。

 大会組織委員会、政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の5者協議で合意した。

 新型コロナウイルスは変異株の世界的拡大もあり、厳しい感染状況が続いている。多くの海外客が来日すれば、感染がさらに広がりかねない。

 訪日外国人の新規入国を原則認めていない現状も踏まえれば、断念は当然の判断といえよう。

 海外在住者向けチケットは計63万枚で、今後払い戻しに入る。海外からのボランティアの受け入れも原則的に見送る方針だ。

 ただ、これで「安全安心な大会」が保証されたわけでなく、大会に対する国民の懸念を払拭(ふっしょく)するのは簡単ではない。

 20、21日に共同通信が実施した電話世論調査では、今夏の開催を求める声は23・2%と上向いたものの、中止するべきだとした人は39・8%に増え、再延期を求める人も含めると7割以上がなお開催に否定的だ。

 いまだに開催の可否判断の基準も示されていない。開催ありきの姿勢では、国民の理解が得られないことを大会関係者は肝に銘じてもらいたい。

 海外客は見送られたが、選手や大会関係者ら数万人規模の入国が見込まれ、安全な大会にするためには感染抑制のための多数の医療スタッフが求められる。

 大会組織委は選手や大会関係者にワクチン接種を義務づけておらず、クラスター(感染者集団)が発生しないよう現行計画の検査の頻度を増やす必要もある。

 一方、国内客の上限については4月中に方向性を決めるとしている。

 政府のイベント制限の方針に準じ、今のところ会場の収容人数の「50%」とする案を軸に検討しているようだが、感染状況次第で無観客にする判断も迫られよう。

 海外客の断念で、安倍晋三前首相が掲げた「完全な形」での開催は実現せず、外国人観客やボランティア、住民が草の根レベルで国際交流や相互理解を深める機会は大幅に減る。訪日客による経済効果もその多くが損なわれそうだ。

 世界中から多くの人々が集う「平和の祭典」の理想からはほど遠い形になっても、開催する意義はあるのだろうか。

 政府や大会組織委は、その問いにきちんと答える責任がある。