朝鮮半島有事を想定し、米韓両政府が毎年春に行ってきた最大規模の合同軍事演習が終了することになった。

 今後は規模を縮小し、名称を変更して継続するという。

 先の米朝首脳会談で合意できなかった非核化交渉について北朝鮮に一定の配慮をすることで協議進展を促す狙いがあるとみられている。緊張緩和に寄与する動きであるには違いない。

 ただ北朝鮮は依然として核・ミサイル廃棄への具体的な行動に踏み出していない。演習終了が北朝鮮の態度に釣り合うのか疑問だ。

 演習は北朝鮮に対する大きな「圧力」の一つである。非核化実現前の終了決定により、米国は交渉妥結前に有力な交渉カードを失った可能性がある。

 トランプ米大統領は非核化交渉での譲歩ではないと強調するが、北朝鮮への融和姿勢が透けて見える。自身の功績と宣伝する北朝鮮の核・ミサイル実験の中止継続を維持し、難航する米朝交渉を前進させたいとの思惑があるのは間違いなかろう。

 これまで北朝鮮は演習のたびに自国への侵攻準備だと激しく反発してきた。一方、トランプ氏は昨年6月の初の米朝首脳会談後、対話継続中の演習中止を表明した。今回の演習終了は北朝鮮にとってそれを上回る見返りではないか。

 ならば次は北朝鮮が具体的な動きを示さなくてはならない。

 米韓両軍は大規模演習を打ち切り、代替の演習や訓練を通じ、即応能力を維持するという。在韓米軍は陸軍と空軍主体のため過去の演習には在日米軍の海兵隊なども参加していたが、規模縮小は必至だ。北朝鮮をけん制する役目を果たしてきただけに国際的な圧力低下を懸念する声も上がりそうだ。

 気がかりなのは、トランプ氏が今回の決定理由に国防予算の「節約」を挙げていることだ。演習終了が東アジアの安全保障面にどう作用するか言及はなく、国防予算削減を重視する姿勢を改めて鮮明にしたといえる。将来、在韓米軍の縮小・撤退に結び付くことを危ぶむ向きは少なくない。

 日本政府は米韓演習終了に関し、同盟国である日韓両国の防衛に対する米国の関与は揺るがないとしている。日朝交渉実現や拉致問題解決には米韓両国の協力が不可欠なためとみられる。一方で、在韓米軍の即応能力や北朝鮮への抑止力が低下すれば日本の安全保障環境にも影響しよう。慎重に事態を注視する必要がある。